Miss SAKE News/Blog

「この国が持続可能であるために」2023 Miss SAKE 岐阜 高田蘭子

皆さまこんにちは。
2023 Miss SAKE 岐阜 高田蘭子です。

先日、第13回ナデシコプログラムに参加してまいりましたので、ご報告をさせていただきます。

講義内容

  1. キャビア入門/キャビアソムリエ協会 理事長 出口彰様
  2. ワイン入門/俳優 辰巳琢郎様
  3. 酒と菌と人類と気候/東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 教授/総長特任補佐 五十嵐圭日子様
  4. チョウザメとキャビア/キャビアソムリエ協会 理事長 出口彰様

【キャビア入門】

キャビアは、チョウザメから取った魚卵製品のことで、その昔から「多産の象徴」「長寿の象徴」とされ、栄養価の高い美容と健康に優れた食品として日本でもお祝いの席で親しまれてきました。

天然のキャビアは、ワシントン条約にて国際取引が禁止されています。

その希少さ故に、キャビアの類似商品、その名もイミテーションキャビアというチョウザメ以外の魚で作られた商品もあります。

例えば、ランプフィッシュという魚の卵をキャビアのように黒く着色したもの、樺太ししゃもの卵、ニシンの魚肉から作られているものもあります。

キャビアだと思って食べていたものは、実はキャビアではないかもしれません。

また現在、キャビアのみが取り出され、チョウザメの魚肉は使われず破棄されることが問題となっています。

ここで、チョウザメはサメではありません。 

胸ビレを水平に広げたまま泳ぐ姿や上下非対称な尾ビレのかたち等が海のサメに似ている事、硬鱗と呼ばれる鱗がチョウの形に似ているところからチョウザメ(蝶鮫)と名付けられました。

また、チョウザメは硬骨魚類、サメは軟骨魚類と、系統も異なります。

チョウザメは、1991年以降乱獲や密漁が加速したため、天然のチョウザメは絶滅の危機に陥りました。

そのため、2020年代には市場に出回るキャビアの約90%が養殖されたチョウザメから生産されたものとなっています。

しかし、養殖が良くないということでは決してありません。寧ろ天然のチョウザメは、海底の餌と共に土も食べてしまうので臭みがあります。

1983年、ロシア(旧ソ連)から日本へ友好の証としてチョウザメが寄贈されました。

そして、このチョウザメを宮崎県が初めて養殖に成功したことが国産キャビアの歴史が始まりです。

現在では、日本の各地でチョウザメが養殖されており、その卵からキャビアが生産されています。

岐阜県で生産されている奥飛騨キャビアもそのひとつです。
名産品を作って、地域の産業を盛り上げていこうという背景があります。

しかしチョウザメの魚肉には、

  • EPA、DHA などの高度不飽脂肪酸
  • コラーゲン
  • コンドロイチン硫酸
  • カルノシン

が豊富に含まれ、またアミノ酸価は90近い値を示し、他の魚種よりも高いことが明らかとなっています。

すなわちチョウザメは、人間に有益な蛋白質を多く含んだ魚肉であるといえます。

もちろんお酒との相性もよく、特に、酸のある上品な日本酒が良いそうです!

今回、出口様がチョウザメを取り寄せ、お料理を振舞ってくださりました。その内容は後半に記します。

出口様、この度はご講義いただきありがとうございました。

【ワイン入門】

皆さま、「日本ワイン」をご存知でしょうか。

日本ワインとは、国産のブドウのみを原料とし、日本で製造されたワインのことです。 

一方で、ブドウや果汁を海外から仕入れ、日本で製造したワインを「国産製造ワイン」といいます。

日本ワインの出荷量は増加傾向で、令和2年度の推計値では、輸入ワインを含む国内市場で5.4%を占めるまでになりました。

今回ご講義いただいた辰巳様は、日本ワインの振興に大きく貢献されています。

2003年、日本ワインがまだあまり浸透していなかった頃、「日本ワインを愛する会」を発足し、副会長に就任されました。

そこには、日本ワインを大切にしたい。頑張っている人がたくさんいることを知ってもらいたい、という思いがあったそうです。

まだこの頃、日本のワイナリーは150~160しかありませんでしたが、辰巳様のPRのお力もあり、現在では約3倍の450以上にまで増えています。

意外なことに、私が住んでいる岐阜県にも存在しています。

今回、「甲州」を使った白ワイン、「マスカットベリーA」を使った赤ワイン、そして、「甲州」と「山ぶどう」をアッサンブラージュした赤ワインスパークリングを試飲させていただきました。

甲州

辰巳様曰く、「まずは甲州から知れ!」だそうです。

現代では日本で最も多くワインにされているブドウ品種ですが、元々はもともと食用です。

種が小さく、皮が薄いのが特徴で、適度な甘さがあります。

日本人が好む料理には甲州がよく合うそうです。

マスカットベリーA

「マスカットベリーA」は日本独自の品種です。

1927年、川上善兵衛様が日本の気候風土に合う葡萄を求め、何百種類もの葡萄の苗木を輸入・交配し生み出されました。

現在、国内の赤ワイン向けブドウ品種としては最も多く作られています。

種が大きく、皮が厚いのが特徴です。

山ぶどう

山ぶどうは日本の気候風土にあったブドウで、山登りでは山葡萄を食べ、酸と水分を摂取するなど、古くから日本人と近い存在でした。

山ぶどうは、酸っぱくて濃いのが特徴です。

酸は料理との相性に関わるので、ワインづくりにおいて酸が味を左右すると言っても過言ではないですが、山葡萄は酸っぱいため調整する必要がないそうです。

今回試飲させていただいた赤ワインスパークリングは辰巳様がプロデュースされている「今様」です。

お手頃な価格で御提供されているので、是非一度皆様にも味わっていただきたく存じます。

辰巳様自身のワインに対する目標は、日本人のどの家庭にも常にストックがあり、ビールのように普通に飲むようになることだそうです。

そして、お料理に合わせて自由に選べるようになってほしいと仰っていました。

ワイン単品ではなくお料理に合わせて飲むと、本当に美味しいワインが分かるんだとか。

私もそうですが、ワインは高級なお店で飲むような敷居の高い飲み物という印象を持ち、敬遠されている方は多いと思います。

しかし、ワインは毎日飲んでも美味しく、敷居は決して高くないものです。

また、金額が高い程良いワインと思われがちですが、辰巳様曰く「安くて美味しいワインが良いワイン」だそうです。

日本ワインは日本の風土で育まれたお酒であり、その点、日本酒とよく似ています。

日本酒と日本ワインは兄弟のようなものだと分かりました。

辰巳様、この度は貴重なお話をしていただき、誠にありがとうございました。

【酒と菌と人類と気候】

地球は氷河期と高温期を繰り返しており、現在は過去の流れから見て高温期であるため、地球温暖化について心配する必要はないと仰る方も見えます。

しかし2019年、CO2濃度が明らかな異常値を示しました。

相関関係は分かっていないものの、CO2濃度と気温の波は一致しています。

そのため、CO2が地球を温めることは確かです。

地球温暖化をあらわす現象として、海面上昇、北極点の氷が溶けていること、桜が過去1200年で最も早く満開になったこと、豪雨などの異常気象などがあげられます。

また、私たちMiss SAKEが大きく関わっている日本酒の原料であるお米へも大きな影響を与えます。

夏の最低気温の上昇により品質が悪化し、実際、米所である新潟では既に異変が起きています。あと10年20年すると、新潟でお米が作ることができなくなってしまうかもしれないと聞き、衝撃を受けました。

そのため、お米が作れる地域の南限が北へ上がっており、今や北海道ではブランド米が誕生するまでになりましたが、この北海道でさえも、あと10年20年すると作ることができなくなるかもしれません。

CO2を排出し蓄積してきた過去は変えられませんが、今からでもCO2の排出を食い止めることで、50年後、100年後の温度上昇を抑えることはできます。

バイオエコノミー

世界は既に身の回りの物が「何で出来ているか」に注目しています。

例えば自転車。

自転車のパイプは鉄を固めた物であり、作る際に大量のCO2を排出しています。

そこで、「日常使いをする分には自転車はそこまで頑丈である必要もないので、木で代用できるのでは?」という声が上がり、実際に木のパイプで出来た自転車が開発されています。

このように、バイオエコノミーにおいては「製品としてはこっちがいいけど、環境的にはあっちがいいよね!」という考えが大切だそうです。

他にも、トイレブラシ、お皿、服を染める染料などが植物由来の物を使用して作られたり、ヘッドホンを菌に作らせる動きもあるのだとか。

また最近では、服や小物に使用される動物の本革が廃止され、代わりに植物由来のヴィーガンレザーを使用する物が増えていますが、中にはキノコの皮を使用した物まであるそうです。

もはや、環境に優しい物を使っていることがオシャレという考えが世界にはあります。

また、植物の力に注目して誕生したのが「バイオ素材」です。

バイオ素材のメリットは2つあります。

1つ目は、石油を使わないこと。

バイオ素材は、主な原料として「トウモロコシなどの穀物、サトウキビの搾り粕、トウゴマなどの植物油類」が使われます。

石油は有限ですが、植物は生きているため再生可能であり無限に作ることができます。

またバイオ素材は日本酒づくりと同じように、糖化、発酵の工程を経て作られます。

2つ目は、石油を原料としてプラスチックを作る時とは違い、CO2を排出しない、すなわちカーボンニュートラルであることです。

私たちができることは、バイオ素材が使用されている物を選んで購入することです。

皆が環境に優しくない物を購入しなければ、次第に作られなくなります。

コストが、これからのコストになる。

このお言葉がとても心に響きました。

私も環境に優しい物を選び、オシャレになろうと思います。

五十嵐様、この度はとても有益なお話をしていただき、誠にありがとうございました。

【チョウザメとキャビア】

キャビアソムリエ協会 理事長の出口様曰く、チョウザメやキャビアを使用したお料理のことを「貴族”風”料理」というそうです。

今回は特別に、ゲストハウス酒坊 多満自慢様にて、貴族風料理のフルコースを振舞っていただきました。

ご用意いただいたチョウザメの種類は「スターレット(Starlet) 」というコチョウザメです。

カスピ海では滅多に獲れないため、そのキャビアはロシア皇帝への献上品とされていました。 世界一小さなチョウザメで「最高級品種・最高品質」のキャビアです。

まずは日本酒キャビア作りから。

①チョウザメのお腹を切り開き、キャビアを取り出す。

想像以上にキャビアがたくさん詰まっていて驚きました。それもそのはず、キャビアは母体の7%くらいを占めるそうです。

また、キャビアは通常1粒十数円 、100gだと10万円ほどで売られているため、今回は20万円くらいの量がありました。

②網で筋子を解す

③飽和食塩水(氷水)で洗う / 濾す

④日本酒をボールに浸し、そこにキャビアを入れ、2分漬ける。

今回は、多満自慢(純米酒)と香川(大吟醸)を使用しました。

⑤水気を切る

⑥3.5%の塩を混ぜる

この際に使用する塩は、海塩だとニガリがキャビアの殻を柔らかくしてしまうため、岩塩が良いそうです。

完成した日本酒キャビアを、味に影響を及ぼさないプラスチックのスプーンでキャビアをすくい、手の甲に乗せて頂きました。

この際、テイスティングに用いるスプーンによってはキャビアの風味を損ねてしまう為注意が 必要です。

一般的な金属製スプーンはキャビアに金属イオンが移り、臭いがついてしまいます。

繊細な風味が台無しにならないよう、化学変化を起こしづらい純金のスプーンが良いとされています。

その他のキャビア専用スプーンとして、シェルスプーン(貝殻スプーン)や、木のスプーンが望ましいとされています。

吟醸系のような精米歩合が低い日本酒より、精米歩合が高い日本酒に漬けたキャビアの方がしっかり日本酒の風味がし、キャビアに合うことが分かりました。

また、特別に1週間程熟成させたキャビアも味見させていただきましたが、さらに風味が増し、大変美味しかったです。

そして、お刺身、しゃぶしゃぶ、コラーゲンスープ西京焼き、酒蒸し、フライ、ミニ丼と、貴族風料理のフルコースを頂きました!

中でも特に美味かったのはお刺身です。鯛のようなコリコリした食感もありながら脂も乗っており、人生で初めての感覚でした。

こんなに美味しくて、且つ栄養素がたくさん含まれている食材が何故破棄されてしまうのか、不思議に思いました。

是非、チョウザメの栄養価の高さと美味しさを広めたいです。

出口様、事前にチョウザメをお取り寄せいただき、さらに素敵なお料理を振舞っていただきありがとうございました。

また、ご協賛いただいたファウンダーの愛葉様には心より感謝いたします。

さらに、一日サポートいただきました一般社団法人 Miss SAKE 代表理事 大西美香様、2023 Miss SAKE グランプリ 磯部理沙さん、誠にありがとうございました。

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