皆さま、こんにちは。
2021 Miss SAKEの松崎未侑です。
先日、WSET SAKE Level 3 <Advanced Course>第6回講義を受講いたしました。
WSET SAKE Level 3 <Advanced Course>の概要については、第1回目のブログ記事をご覧ください。
第6回:醸造アルコール、しぼりと仕上げ
醸造アルコール
皆様、日本酒の原材料を覚えていらっしゃいますでしょうか?
米、米麹と水が主な原材料ですが、「醸造アルコール」が添加されているものがあります。
醸造アルコールの添加が行われていないのが特定名称の一つ「純米酒」と呼ばれるわけですが、時折「私は純米酒しか飲まない」と仰る方がいらっしゃいます。醸造アルコール独特の風味が気になるという意見もありますが、酒蔵様があえて醸造アルコールを用いるのにはいくつか理由があります。
✔️吟醸酒のアロマを引き立てる
✔️淡麗辛口の日本酒にするため
✔️普通酒を造るため(比較的に安価に大量生産ができる)
恐らく3番目の理由が一般的には知られているかもしれませんが、アルコール成分は香り成分との相性が良いことから吟醸系の日本酒造りには向いているのです!
読売新聞への寄稿記事「日本酒探Q Miss SAKEのオススメ 9月号:みやびに秋味わって」にて、菊酒を紹介した際にも、アルコール度数の比較的高い「原酒」をお勧めさせていただきました。
記事: https://www.yomiuri.co.jp/local/chubu/feature/CO052292/20210910-OYTAT50057/
普通酒には原材料の50%まで醸造アルコールを用いて良いのですが、特定名称酒(純米酒や吟醸酒)には原材料の10%までの使用の規定があるのも特徴です。
醸造アルコール以外にも、甘味成分や、酸、旨味のもととなるアミノ酸などを発酵の最後(濾過する前)に加えることも普通酒は許可されていますが、特定名称酒はNGです。
法律で、原材料の分量や工程についても厳しく定められる日本酒の世界。
ルールを守りつつ、一つ一つの工程にこだわることで特定名称酒や普通酒の、あの味わいが醸し出されているのかと思うと感慨深いです。
しぼり
醪が完成したら、お米と水分が混ざったものから液体を搾り出します。
機械で行う場合は、巨大アコーディオンのような形で、醤油を絞るときなどにも使用される自動圧搾ろ過機、通称「ヤブタ式」や、洗濯機のような形状で、それを回転させることで液体と酒粕部分を分ける「遠心分離機」。
手作業で行う場合は、袋に入れた醪を重ねて、重りをのせて搾る「槽(ふね)しぼり」や、袋を吊るして重力のみで搾る「雫(しずく)しぼり」など様々です。
搾りは3段階に分けられ、搾り出しから順に①あらばしり、②中取り/中汲み、③責めと呼ばれます。
最も味の整った部分は①〜③のどれだと思いますか?
あらばしりは英語でWild-runとも呼ばれるほど、力強いキレと軽やかさが出やすいため、その特徴を活かして生酒での販売が多いです。
一方で、責めは酒粕の割合が多いことから、旨味や雑味があり重厚感がある飲み口。
ズバリ質問の答えは、中取りです。味わい、香り、アルコール感とバランスが取れており、最も安定しているため鑑評会に出品されることも多いのです。
同じ日本酒の搾ったタイミングの違いで飲み比べも魅力的ですね!
仕上げ
日本酒の仕上げには、搾った後にも数多くの工程が残っているのです!
1. おりを取り除く
2. プロテインを取り除く
3. 色やアロマを取り除く
4. 火入れ
5. 貯蔵
6. 加水とブレンド
1. おりを取り除く
酒粕は英語でleesと言いますが、酒粕を搾りで取り除いた日本酒には、「おり」fine leesが残っています。
おりを取り除くにも3通り。
①「重力」を用いて、時間をかけて沈澱させる方法。
② Super fine filteration machineでおりをキャッチして取り除く方法。
③ 化学的製品を用いておりを取り除く方法。
2. プロテインを取り除く
プロテインは瓶詰めした後にモヤを発生させる原因となるので取り除きます。
3. 色やアロマを取り除く
炭を用いて濾過をします。
この炭が発酵後の黄色っぽい色や必要以上のアロマを取り除いてくれるそう。
鑑評会に出品する日本酒は透明で、色がついていないのが多いそう。
日本の鑑評会では、減点方式で透明度や色、香りについてしっかりと評価されるためこのような作業を経ているのが一般的なのです。
無濾過の日本酒を直訳すると、unfiltered sakeとも訳せます。しかし、unfiltered sakeは一般的ににごり酒のことを指します。これらのふたつを区別するべく、WSETでは無濾過の日本酒のことをunfined sakeと呼ぶのです!日本酒を洗練させるイメージですね。
4. 火入れ
日本酒の仕上げで肝となるのが火入れの作業。
貯蔵を挟んで2回の火入れが存在するのですが、なんと、組み合わせは6通り。
専用の機械、瓶詰め前後での火入れや生酒として微生物を生かしておくタイミングなど。
全ての選択が日本酒に大きな影響を与えるのが微生物の世界ですね!
5. 貯蔵
貯蔵は味をのせるためと言われていますね!
新酒も大好きですが、やはり秋に出てくる「ひやおろし」「秋上がり」は私のイチオシです!
貯蔵方法も、タンク、ボトル、常温、冷蔵庫、トンネル、洞窟など様々な選択肢があるのです。
古酒も魅力的ですよね。
貯蔵や熟成だけで、ブログ記事が数本かけてしまいそうですが今回は割愛いたします。
6. 加水とブレンド
アルコール度数を引き下げるために、日本酒は加水をされるのが主流です。
これをしていないのが、原酒ですね!
最近はトレンドとして、日本酒の味わいそのものを楽しんでほしいという蔵元の思いから、アルコール度数を低く発酵させる方法も流行っております。
WSET SAKE Level 3はたった1回の講義で、こんなにも濃い内容量を学んでいきます。
クリス先生が小話も沢山してくれるのでブログ内では割愛した情報も多く、毎講義で先生方の日本酒への情熱に驚きます。
受講生も、日本酒ビジネスを始めようと思っている方や、シンプルに日本酒が大好きで趣味として学んでいらっしゃる方、ワインにも詳しい方など、動機は様々ですが日本酒への探究心が旺盛で感化されます。
質問も活発で学び合える環境があり、恵まれている学び場が大変有難いです。
このような機会を設けていただけること、心より御礼申し上げます。
2021 Miss SAKE
松崎未侑