【三重県の歴史と日本酒・食材を味わう】
皆様こんにちは!
2026 Miss SAKE 北海道の若井日南子と申します。
今回は三重県の方まで伺い、ナデシコプログラムに参加させていただきました。
様々な方の協力を経て、貴重なご講義を受けさせていただいたり、なかなか経験できないことを経験させていただきました。
当日の様子を是非、最後までご覧いただけたら幸いです。
【プログラム内容】
◯清水清三郎商店様 蔵元見学
(講師:代表取締役 清水 慎一郎 様/杜氏 内山智広 様)
◯伊勢神宮 訪問
(講師:神宮司庁 広報室次長 神宮参事 音羽悟様)
◯酒場森下 本館 様にてお食事
【清水清三郎商店様 蔵元見学】
◯ 鈴鹿市の日本酒の歴史
まずは、清水慎一郎様より、鈴鹿市の日本酒の歴史をご教示いただきました。
大和朝廷を支えた「御食国」と伊勢国府の存在
日本古代から平安時代にかけて、皇室や朝廷に海水産物を中心とした御食料(贄)を貢進する国は「御食国(みけつくに)」と呼ばれ、若狭国、志摩国、淡路国などが指定されていました。
伊勢神宮を擁する伊勢国は大和朝廷にとって非常に重要な場所であり、その国府は鈴鹿の地に置かれていました。
古くから街道が整備され、有力な豪族が住み、稲作と共に酒造りも盛んに行われていた歴史があります。
「味酒(うまさけ)」という由緒と酒の進化
古くから美味しい酒の産地として栄えていた事実は辞書にも記されており、「うまさけ(味酒)」という言葉は、酒の産地として有名なことから「鈴鹿」にかかる枕詞であると定義されています。
また、日本書紀における大蛇(ヤマタノオロチ)との戦いの記述には、素戔嗚尊が「たくさんの木の実を集めて」酒を醸造するよう命じる場面があり、神話の時代にはワインに近い果実酒が用いられていたことが読み取れます。海産物が豊富な日本の食文化において、我々の祖先がより料理に寄り添う米の酒を自らの意思で選択し、進化させてきた歴史に深いロマンを感じます。
熨斗(のし)鮑の起源と「束ね熨斗」の吉祥文様
伊勢神宮に納められる国崎(くざき)の熨斗鮑(のしあわび)は、2000年以上の歴史を誇ります。倭姫命が国崎を訪れた際、海女の元祖とされる「おべん」から差し出された鮑のあまりの美味しさに感動し、神宮への献上を命じたのが始まりとされています。この鮑こそが、日ごろの贈答品の印に使われる「熨斗」の起源であり、神宮では『延喜式』に則って「鰒」と書かれます。さらに、この熨斗を複数まとめた「束ね熨斗」は、物や物品などを描いたおめでたい伝統的な「吉祥文様」として定着しており、大漁旗や着物の柄などにも広く使われています。
持続可能な米作りと清浄な水
酒造りの根幹である米作りは、輪作を必要とせず連作障害が発生しないという持続可能性を体現しています。水田は水を保持して生物多様性の温床となるだけでなく、土壌流出や洪水の防止、さらには炭素を固定して温暖化対策にも寄与し、伝統的な稲作が地域の生態系やコミュニティを支え続けているのです。三重県を含むこの地域の地形は、極楽浄土のように感じられたことから熊野信仰を生み出し、豊かな水と自然への畏敬の念が現在の酒造りにも通底しています。
◯ 清水清三郎商店について
150年を超える歴史と手造りの魅力
1869年(明治2年)に創業し、150年以上の歴史を持つ清水清三郎商店は、現在も鈴鹿の地で脈々と酒造りを続けています。社員杜氏の指揮のもと、年間を通じて伝統的な酒造りの手法を守りながら、「手造りの酒の魅力とは何か」を日々追求されています。また、地元・鈴鹿への深い愛情と誇りはボトルのデザインにも表れています。
日本酒『鈴鹿川』のラベルには、精緻な技術を要する鈴鹿の伝統工芸「伊勢型紙」の文様があしらわれています。さらに、代表銘柄である『作(ざく)』のデザインモチーフには、日本で唯一伝統工芸品に指定されている三重県鈴鹿市白子地区の「鈴鹿墨」が採用されており、鈴鹿の酒であることを視覚からも美しく発信しています。
「GI三重」と「Mie Heritage」が守る至高の品質
三重県酒造組合としての地域ブランド構築の試みとして、2020年6月19日に国税庁により指定された地理的表示「GI三重」があります。伊勢神宮への参拝者をもてなすために酒造りが発展したという人的要因や、冷涼な気候と豊富な水資源という自然的要因が背景にあり、滑らかな舌触りと芳醇な旨味、爽やかな酸味を持つのが特徴です。さらに2021年10月1日からは、セグメントをより狭くした三重県独自の認定制度「Mie Heritage」が始まりました。三重県原産または開発された米と三重県の酵母を使用した「純米酒」のみに与えられる厳しい基準であり、そのシンボルマークは将来に向けて残すべき三重の遺産を象徴する美しいデザインとなっています。
第六感を呼び覚ます五感の道行
清水清三郎商店は、お酒が持つ情緖を「第六感を呼び覚ます五感の道行」として表現しています。人が受け取った感覚を外へ表す方法は人の数だけあり、鑑定士は言葉と点数で、ソムリエは語彙で、料理人は一皿に、そして音楽家は旋律に変えて酒の情緒を語ろうとします。グラスの中で光を受け、やさしく漂う香りが広がり、舌の上で味がほどけ、喉を過ぎる瞬間に温度や質感が記憶に刻まれる。その五感を通した体験の奥に、造り手の想いや自然の恵みを見出します。
銘柄『作(ざく)』に込められた想い
こうした数々の画期的な取り組みの根底には、蔵元が大切にしている揺るぎない哲学があります。
「酒の価値は、誰かの口に入った瞬間に決まる」
酒蔵ができるのはあくまで中身を造ることまでであり、そのお酒が注がれるグラス、合わせるお料理、そして飲む人の笑顔や空間があって初めて「真の価値」が作られるのだと清水様はおっしゃっていました。
ゲーム制作会社とのコラボレーションや、酵母の化学式を音符に変換したピアノ曲『作ソナタ』の制作など、五感で味わう新たな日本酒の価値を、私たち消費者と共に「作り上げている」のだと深く感銘を受けました。
◯蔵見学について
清水清三郎商店様の蔵では、年間約5,000石もの日本酒が造られているそうです。今回は、そんな数々の貴重な日本酒が生み出される製造現場を、同蔵で長年杜氏を務められている山内智広様に特別にご案内いただきました。
まず拝見したのは唎酒室です。ここでは、しぼりたての日本酒を毎日唎酒し、分析を行っているとのこと。室内の壁には手書きの分析表が数多く貼られており、より美味しい日本酒を追求する探究心に脱帽いたしました。
続いて、実際の醸造設備をご案内いただきました。蒸米機や放冷機、麹室、そして麹米を乾燥させる「枯らし室」などを拝見しました。私はこれまで仕事の関係で何度か他の蔵元様を見学させていただく機会があったのですが、蔵ごとに製造現場の工夫は異なり、今回も大変勉強になりました。
見学を通して学んだ清水清三郎商店様の特徴の一つは、洗米工程です。麹米となる酒米を中心に手洗いを行っており、1時間に約300kgずつしか洗えないため、非常に労力のかかる手作業であることを実感いたしました。また、蒸米を放冷機で冷ました後、すぐに麹菌を振りかけるという手法も特徴的でした。
さらに、「フレッシュローテーション」という出荷体制をとられている点も印象的でした。お客様へ極力フレッシュな状態でお届けするため、注文を受けてからお酒を仕上げることにも挑戦されているそうです。
今回の蔵見学を通して、これまで座学で学んできた日本酒の製造知識がしっかりと腑に落ちるとともに、清水清三郎商店様の高度な酒造技術に深い感銘を受けました。
⚪︎作の試飲
最後には、代表銘柄である「作(ざく)」の純米酒から純米大吟醸酒まで、数種類を試飲させていただきました。清水代表が「作」をモチーフに作曲されたピアノ曲を流してくださり、音楽に耳を傾けながらその味わいを楽しむという、とても贅沢な時間を過ごすことができました。
試飲させていただいた中で、私が特に気に入ったのは『作 恵乃智 純米吟醸』です。キレがありながらも花のような華やかな香りがあり、酸味がお米の旨みとその香りをバランスよく引き締めている、複雑でとても奥深い日本酒だと感じました。
今回は、日本酒業界の第一線で活躍されている清水清三郎商店様を訪問し、貴重なお話を伺うことができて大変嬉しく思っております。清水様、山内様、この度は誠にありがとうございました。
【伊勢神宮 訪問】
続いて振袖に着替え、伊勢神宮へ参りました。
まず初めに、神宮司庁広報室次長・宮参事である音羽悟様より伊勢神宮に関するご講義を賜り、続いて正式参拝をいたしました。その後、神楽を拝見いたしました。
〇 伊勢神宮について
悠久の時を敬い、感謝を紡ぐ
鬼門を守る朝熊山(あさまやま)に見守られる神宮には、実に125もの神様がお鎮まりになっています。神々の懐へと続く全長101.8メートルの「宇治橋」は、20年に一度の式年遷宮で架け替えられるまでの間、約1億人もの人々の祈りを受け止めているそうです。途切れることなく新しく生まれ変わるその営みからは、永遠に命を繋いでいく「常若(とこわか)」の精神と、日々の平穏に対する深い感謝の心を学びました。
小さな和を重んじ、盤石な力を育む
神宮には、松が根を下ろす「細石(さざれ石)」が鎮座しています。小さな石が長い年月をかけて集まり、一つの盤石な岩となる様子は、国歌にも詠まれる通り「国家の悠久」と「長寿」の象徴とされています。岩のわずかな隙間から木が芽吹くほどの力強い生命力と、傍らに咲く白梅の凛とした美しさ。個々の小さな力が集まり、大きな調和と美を生み出す姿勢は、私たち日本女性が大切にすべき「和の心」を体現しているように感じられました。
「言挙げせず」の奥ゆかしさを知る
神苑(しんえん)には、明治24年に後の大正天皇が植樹された松が立派に生い茂っていますが、由来を示す看板などは設けられていません。これは、みだりに人が触れないようにするための配慮であると同時に、「言挙げせず(ことあげせず)」という尊い精神の表れだといいます。自身の功績や存在を声高に主張するのではなく、静かに、畏れ多さとともにそこに佇む姿から、多くを語らずとも滲み出る真の品格を教わりました。
「伝統と革新」を調和させる
世田谷区とほぼ同じ広さの森(神宮林)を有する神宮ですが、境内には西洋文化の象徴とも言える「芝生」が広がっています。これは明治時代、近代化の波の中で神宮がいち早く西洋の良きものを取り入れた証であり、ここから日本全国へ芝生が広まったとも言われています。伝統を頑なに守るだけでなく、新しい文化を柔軟に受け入れ、時代を先導していく。その「しなやかな強さ」に対して非常に感銘を受けました。
言葉の響きを愛し、生命の力で護る
江戸時代後期までの言葉の響きを残す「火除橋(ひよけばし)」。かつて「ひ」は「ふぃ」に近い発音であったとのこと。その、日本語の美しい歴史が、その名にひっそりと刻まれています。また、神社を護るように立つ「名木(めいぼく)」の楠(くすのき)は、葉にたっぷりと水分を含んでおり、大切な社を火災から守る役割を果たしているとのことです。
〇 正宮 皇大神宮での正式参拝
正宮である皇大神宮へ赴き、正式参拝を行いました。御垣内(みかきうち)へ入る前に神職の方からお祓いをお受けし、御神前へと歩みを進めました。壮麗な御社殿を前にした際の緊張感と、滅多に得ることのできない得難い経験に、自ずと身が引き締まる思いがいたしました。
〇 神楽殿での御神楽
続いて、伊勢神宮・神楽殿において、御神楽を拝観するという大変貴重な機会に恵まれました。厳かな祝詞の奏上に始まり、巫女による優雅な「倭舞」、そして力強くも厳粛な「人長舞」へと続く神事の流れの中で、日常から切り離され、心が洗われていくような神聖な時間を過ごしました。
数ある演目の中でも、特に私の心を強く打ち、深く印象に残ったのが、最後に奉納された舞楽「蘭陵王」です。
金色の仮面とオレンジ色の装束を身に纏った舞人が現れた瞬間、その場の空気が一変するのを感じました。力強く躍動感あふれる舞の迫力に圧倒されると同時に、その奥にある精緻な動きに目を奪われました。音羽様に拝観後質問したところ、戦いで士気を下げない様、類まれなる美貌を隠すために恐ろしい仮面をつけて戦に赴いたという「陵王」の伝説がモチーフになっている舞であるとのこと。そこには、力強さの中にも言い知れぬ美しさと気高さが感じられ、言葉を失うほどの感動を覚えました。
千年以上もの間、人々の祈りと共に受け継がれてきた伝統芸能の力強さ。そして、神前に奉納される神事としての美しさ。今回の経験を通じて、日本古来の精神性や美意識の奥深さを肌で感じることができました。
【 酒場森下 本館様での三重の味覚】
一日の最後には、三重県内で名高い「酒場森下 本館」様を貸し切らせていただき、Miss SAKEの皆様とのお食事をいたしました。
開宴にあたり、森下社長よりご挨拶ならびに温かい激励のお言葉を賜りました。乾杯のお酒としてご用意いただいたのは、普段お目にかかることすら難しい「而今(じこん) 赤ラベル 雄町」でした。雄町米ならではの豊かな力強さと、フルーティーでありながらもキレのある後味が絶妙に調和しており、多くの方から愛される所以を舌で感じることができました。その他にも、三重県が誇る銘酒の数々を堪能させていただきました。
三重の豊かな海が育んだ海産物も大変美味しくいただきました。中でも驚きましたのは、真珠の母貝として知られるアコヤ貝の貝柱のお刺身です。心地よい歯応えがあり、すっきりとした味わいの日本酒と合わせることで、その魅力がいっそう引き立つように感じられました。
さらに、伊勢海老のグラタンという贅沢な一品もいただきました。森下社長より「『作(ざく) 純米吟醸』とよく合いますよ」とお勧めいただき実際に合わせてみますと、グラタンの深いコクを味わった後に、日本酒がふわりと口の中を爽やかに整えてくれ、まさに至福のマリアージュでした。
Miss SAKEの皆様と楽しく歓談しながら、三重の素晴らしいご馳走や銘酒を囲むひとときは、私にとって大変得難く、素晴らしい経験となりました。
このような貴重な機会をご用意くださった森下社長、そしてMiss SAKE事務局の皆様に、心より深く感謝申し上げます。
2026 Miss SAKE 北海道 若井日南子






































