皆さま、こんにちは。
2026 Miss SAKE 福岡 横尾ちよみです。
ナデシコプログラムもいよいよ第19回。3ヶ月間の学びが終わりに近づいてきたこの日は、一般社団法人Miss SAKE代表理事・大西美香様による泡盛の講義と、最終選考会のプレリハーサル、そして夜は最後の多満自慢さんでのお夕食となりました。
〇当日のスケジュール
10:00〜11:15
- 講師:一般社団法人Miss SAKE 代表理事 大西美香様
- 講義内容:琉球泡盛について
11:15〜12:00
- ファイナリスト3ヶ月の振り返り
13:00〜15:00 / 15:30〜17:00
- 最終選考会プレリハーサル
■ 大西美香様「琉球泡盛について」
Miss SAKEとして、日本酒だけでは足りない
Miss SAKEとして活動していると、日本酒だけでなくさまざまなお酒について聞かれることがあります。大西様は冒頭にそうおっしゃっていました。ドイツ・フランス・アメリカをはじめ各国でMiss SAKEとして活動されてきた大西様だからこその言葉です。
日本で最初に生まれたお酒は実はワイン(ぶどうが自然に発酵したもの)で、日本酒は稲作が盛んになってから口噛み酒として発祥したというお話も、改めて日本の酒の歴史の深さを感じさせるものでした。そして、日本産ワイン・日本産ビール・焼酎・本格みりん、泡盛。日本酒だけでなく日本のお酒を幅広く知ることが、真のアンバサダーとしての姿勢につながるのだと感じました。
①泡盛の歴史的背景
まず、歴史背景が気になったので調べてみたところ、泡盛は約600年前の琉球王朝時代に、シャム王国(現在のタイ)との貿易を通じて蒸留技術が沖縄に伝わったことで生まれた、日本最古の蒸留酒です。江戸時代には琉球国王から幕府の将軍への献上品として、また中国皇帝からの使者である冊封使をもてなす酒として使われており、17〜19世紀には首里王府の命により製造できる場所が首里の三カ所のみに限定されるほど、厳重に管理された貴重なお酒だったそうです。失敗すれば家財没収・島流しの刑が課せられたとも言われているとのことで、それほどまでに大切にされてきた泡盛が、今も沖縄の地で造り続けられていることの重みを感じます。
②日本のお酒の全体像を整理する
大西様の講義では、まず日本のお酒全体の麹の違いから整理していただきました。
- 日本酒:黄麹
- 焼酎:白麹
- 泡盛:黒麹
麹の種類がお酒の個性を大きく左右します。また焼酎は麦焼酎・芋焼酎と名前が変わっても、基本的にはお米の力がベースになっています。ただ最近ここ10年ほどで、ベースの部分も芋にした「芋100%」などの焼酎も生まれてきているそうです。
③泡盛とはどんなお酒か
沖縄の日本酒はないとのことですが、泡盛という沖縄ならではのお酒があります。そんな泡盛は簡単に説明すると「沖縄生まれの蒸留酒」でしょうか。日本酒が醸造酒(発酵させてできるお酒)であるのに対して、泡盛は蒸留酒(発酵させたものをさらに蒸留して作るお酒)です。ワインとブランデー、ビールとウイスキーの関係と同じイメージようなイメージでしょうか。アルコール度数も日本酒が一般的に15度前後であるのに対して、泡盛は30度前後と高め。そして最大の違いは「時間」とのこと。泡盛には古酒(クース)という長期熟成を楽しむ文化が古くから根付いています。
また日本酒のGI(地理的表示)制度のように、「琉球泡盛」と名乗るには、全ての製造工程を沖縄県内で行うことが条件です。産地と製法が守られて初めて「琉球泡盛」を名乗れるということです。
泡盛の大きな特徴は以下の4点:
- 原料:タイ米(インディカ米)を使用
- 麹:黒麹菌を使用
- 製法:全麹仕込み(原料の米を全て麹にして一度に仕込む)
- 蒸留:単式蒸留
なぜタイ米なのか、それはジャポニカ米(日本の一般的なお米)は粘り気が強く、黒麹が中に入り込みにくいため発酵に向かないから。タイ米は粘りが少ないため、黒麹が浸透しやすく発酵がしやすいのだそうです。また黒麹を使う理由も、沖縄の気候と深く関係しています。沖縄のような暑い土地では、日本酒を造るとどうしても腐ってしまいます。泡盛用の黒麹は酸を多く出すことで雑菌の繁殖を防ぐ働きがあり、亜熱帯の暑い沖縄でも安定したお酒造りを可能にしているということでした。
④日本酒との製法の違い——三段仕込みと全麹仕込み
日本酒は「三段仕込み(段仕込み)」で造られます。初添・仲添・留添と3回に分けて原料を加えながら、約20〜30日かけて酒母からもろみへと育てていきます。一方、泡盛は全ての原料を一度に投入する「全麹仕込み」です。タイ米を全て麹にして、泡盛酵母と水を加え、約2週間でもろみを作り上げます。この違いが、日本酒と泡盛のキャラクターの大きな差をきっと生み出しているのですね。
⑤蒸留方法——常圧蒸留と減圧蒸留
泡盛・焼酎の蒸留方法には二種類あります。
- 常圧蒸留は通常の気圧(約100度)で蒸留する伝統的な方法で、原料本来の風味が濃く抽出されます。香ばしさや重厚感があり、長期熟成(古酒)に向いています。
- 減圧蒸留は真空ポンプで気圧を下げ、低温(約40〜50度)で蒸留する方法です。山登りで上に行くほど気圧が下がり息が苦しくなるのと同じ原理で、低い沸点で蒸留できます。熱による成分の分解が少なく、コゲ臭がつかないため軽快でフルーティな仕上がりになります。(初めて泡盛を飲む方にはこちらの方が親しみやすい)
⑥熟成容器の違い——瓶・樽・甕
熟成の容器にも種類があります。
- 瓶:空気との接触が少なく、フレッシュな状態を保ちやすい
- 樽:木の香りが移り、まろやかでウイスキーに近い風味になる
- 甕(かめ):紹興酒など東アジアのお酒に多い伝統的な容器。呼吸するように微量の空気を通すため、ゆっくりと深みのある熟成が進む
泡盛では甕が古くから使われており、子供が生まれた時に甕に入れて20年後、成人したお祝いに一緒に飲むという文化もあるそうです。沖縄出身のファイナリストの子が、実際に子供の頃に作ってもらっていたものを成人式の日に飲んだと話してくれて、なんだか胸が温かくなりました。
⑦古酒(クース)という文化
泡盛の最大の魅力のひとつが「古酒(クース)」という文化です。3年以上熟成させたものを古酒と呼び、中には100年古酒も存在します。日本酒の世界でも熟成酒への関心が高まっているのはここ10年ほどのことだそうですが、泡盛では古くからこの概念が根付いていたのです。また古酒を維持するための「仕次ぎ(しつぎ)」という技法も教えていただきました。これは複数の甕を使って年数の違う泡盛を継ぎ足しながら熟成させていく方法で、以下のルールがあるそうです。
- 常に甕の8〜9割をキープする
- 補充は同年代・同度数のものを使う
- 1年に補充できるのは10%以内
- 甕はセロファンで密封する
異なる年数のものを混ぜると若い方の年の認識となってしまうため(例えば10年物と20年物を混ぜると10年物になる)、必ず同年代のものを補充しなければならないとのこと。長い間人の手で愛情を持って育てていくお酒なんだと聞いてて感じました。またおそらく第二次世界大戦の沖縄戦で酒造関連も被害を受けたことと思います、こうして今でも泡盛を飲むことができるのは、これまでその時代の人々が守り、繋いできたからですね。
⑧日本のお酒それぞれの個性
大西様は日本の三つのお酒をこんな言葉で表現されていました。
- 日本酒:冬の寒さと清らかな水が生み出す、並行複発酵の極地。
- 焼酎:日本の豊かな大地と多様な農産物を、蒸留の火で凝縮したエッセンス。
- 泡盛:亜熱帯の猛暑を黒麹の力で制し、100年の時を蓄積する究極の古酒。
全ては麹という共通の祖先を持ちながら、異なる気候と風土、そして人々の知恵によって全く異なる頂点へと進化してきた。この言葉が、日本のお酒の多様性と奥深さを見事に表していると感じました。
最後に、お酒を勧める時の心がけ
大西様からMiss SAKEとして活動する上でのアドバイスもいただきました。お酒の好き嫌いはその人との相性。おすすめを聞かれたら自分のおすすめを伝えつつ、「普段はどんなものを飲まれますか?」と相手に寄り添うことが大切と。また作り手さんそれぞれに違う想いがあることも教えてくださいました。例えば、精米歩合ひとつとっても「いいお米だから削って味わってほしい」という人もいれば「削りたくないほどいいお米だから」という人もいる。その背景まで知って伝えられるようになりたいと感じました。
また「日本酒好きを泡盛の世界に引き込むならエンダーを勧める」というアドバイスもありました。エンダーとは日本酒好きが泡盛に入りやすい入口となるお酒のことでした。まず多くの人が好むものや、飲みやすいものから入ることで、その世界の奥深さを知ってもらえるというアプローチは、日本酒を広める時にも通じる考え方だと思いました。
■ 3ヶ月の振り返り——ファイナリストたちとの時間
大西様の講義が終わった後、ファイナリストそれぞれが3ヶ月を振り返る時間がありました。涙するメンバーもいて、でもとても温かい空気が流れていました。
本当にあっという間の3ヶ月でした。日本酒だけでなく日本文化を、これほど広く深く学べた時間は他にありません。Miss SAKEを知ったこと、ナデシコプログラムに参加できたこと、そしてこのファイナリストたちと3ヶ月過ごせたこと。このご縁と貴重な機会に、心から感謝しています。そしてこのご縁を今後とも繋いでいけたら嬉しく思います。
私が学んだことを忘れないように、そしてこれまでの学びをこのファイナリスト23人だけのものにせず、自分自身しっかりと整理し、自分の言葉で伝えらえるようにしていきたいと思います。この3ヶ月で感じたことはあまりに多くて、一言では語れないので次の回で、改めて振り返りたいと思います。
■ 最終選考会プレリハーサル
午後は中村様・森田様・大西様・竹原様のサポートのもと、初めての本格的なリハーサルを行いました。ウォーキングの練習、そして各自が作ってきた自己PRのお披露目。みんなそれぞれの個性と地元の魅力が詰まっていて、見ていてとても楽しいリハーサルでした。
リハーサルをしながら、ふと最初のことを思い出しました。Miss SAKEのファイナリスト発表会を初めてYoutubeで見た時、「自分にはできないだろう」と正直思っていたのです。また同じファイナリストのアイデアや個性の豊かさを見て、素晴らしいと感じると同時に、自分をアピールするということがあまり得意ではないかもしれないことに気づきました。
でも、Miss SAKEに応募する前に、あの時そう思っていた自分が、とうとう最終選考会に臨もうとしている。この3ヶ月はたくさんのことを吸収しながらも、自分自身と向き合い続けてこれた時間だったと思います。今までの人生で一番濃ゆい春だったかもしれません。またウォーキング指導、それからスピーチでは「情報量が多すぎるからできるだけ絞って」「ドイツ語入れてみたらいいじゃん」など様々なアドバイスをいただきました。私自身、伝えたいことや想いは山ほどあります。でも言語化がまだ追いついていない部分もあると感じました。残り数日、自分と向き合いながら「伝えたいもの」を削ぎ落として磨いていこうと思います。Miss SAKEへの挑戦を超えて、自分の夢を宣言する日にしたいです。
■ 最後の夕食——酒坊多満自慢さんにて
夜は、石川酒造の酒坊多満自慢さんで海鮮ちゃんこ鍋をいただきました。この3ヶ月、プログラムの楽しみのひとつがこのお夕食でした。毎回各地の食材や料理を丁寧に提供してくださり、日本酒との相性も抜群で。各地のファイナリストが選んで持ってくる日本酒におつまみ。そしてみんなとたわいもない話や、夢を語り合うそんな時間。
またこの日は、日本酒だけでなく泡盛も楽しみました。最後の夕食の楽しい時間は、あっという間に過ぎていきました。
この夜、嬉しいサプライズもありました。沖縄県のファイナリストが「WATTA」という沖縄のお酒とお菓子を一人ひとり丁寧に包んでプレゼントしてくれて、石川県のファイナリストは自分で作ったお猪口をみんなへのプレゼントとして持ってきてくれました。思い出が日に日に増えるだけでなく、みんなとの時間を形として、残るものでもらえたこと、その想いがとても嬉しかったです。
こんなに忙しい時期に、自分のことで精一杯なはずなのに、周りのことを想える。可愛くて、知的で、優しくて素敵なメンバーに出会えたこと改めて、このプログラムに参加できて本当によかったと思いました。
もっと飲みたい、もっとみんなと話したい。そんな気持ちをぐっと我慢しながら、最終選考会に向けた動画やスピーチを考えるために早めに抜けました。
これまで学んできた数々のこと、切磋琢磨しながらも支え合った日々、そして多満自慢で過ごしてきた夜、このメンバーと囲んだ最後の夕食で、それら全てがじんわりと胸に沁みました。
最後に
今回の講義を通じて、日本酒と泡盛は全く異なるお酒でありながら、麹という共通の祖先を持ち、その土地の気候と人の知恵によって育まれてきたという点で深く共鳴していると感じました。日本酒が冬の寒さの中で生まれるように、泡盛は亜熱帯の暑さの中で生まれる。どちらも「その土地でしか生まれないお酒」であること。Miss SAKEとして日本酒を伝える立場から、同じ敬意を持って泡盛や他の日本で作られるお酒の魅力も伝えていきたいと思いました。
そしてファイナリストはライバルでありつつも、日本酒が好きで、日本酒や日本文化を発信したいという同じ夢を持つ仲間。最後まで共に学び、互いを高め合い励まし合いながらの最終選考会をもう時期迎えられることを本当に嬉しく思います。
〇 English Brief Summary
The 19th Nadeshiko Program session featured a lecture on awamori by Ms. Mika Onishi, Representative Director of Miss SAKE. Her opening message set the tone: as Miss SAKE, we will be asked about far more than sake alone. Japanese wine, beer, shochu, mirin, and awamori are all part of the story of Japanese drinks, and a true ambassador should know them all.
Awamori is Japan’s oldest distilled spirit, born approximately 600 years ago in the Ryukyu Kingdom through distillation techniques introduced via trade with the Kingdom of Siam, present-day Thailand. During the Edo period, it was presented as a gift from the Ryukyu king to the Shogun and used to entertain Chinese imperial envoys. At one point, production was restricted to just three locations in Shuri by order of the royal government, and failure could result in exile or confiscation of property. That a spirit so strictly protected then is still being made in Okinawa today says something about the dedication of the people who have carried it forward.
The lecture covered the key differences between Japan’s three major spirits. Sake uses yellow koji, shochu uses white koji, and awamori uses black koji, which produces high citric acid levels to prevent spoilage in Okinawa’s subtropical heat. Awamori is made from Thai rice rather than Japanese rice, as the lower stickiness allows the black koji to penetrate more easily. Unlike sake’s three-stage fermentation process, awamori uses full-koji fermentation, where all the rice is converted into koji before being fermented in a single batch over about two weeks.
Distillation method shapes the final character. Atmospheric distillation at around 100 degrees produces a rich, full-flavored spirit suited to long aging. Reduced-pressure distillation at lower temperatures produces a lighter, fruitier style that is more accessible to newcomers.
Awamori has long had a culture of aged spirits called kusu, with some examples aged over 100 years. To maintain aged awamori, a technique called shitsugi is used: regularly topping up the jar with spirits of the same vintage, keeping the level at 80 to 90 percent, with no more than 10 percent added per year. Mixing different vintages reduces the age classification to the younger one, so precision and care are essential. One of our finalists from Okinawa shared that her family had made a jar of awamori when she was born, and she drank it with them on her coming-of-age day. That is the kind of culture awamori carries.
Ms. Onishi described Japan’s three spirits beautifully: sake as the pinnacle of parallel fermentation shaped by cold winters and pure water; shochu as the essence of Japan’s agricultural diversity condensed by fire; and awamori as the ultimate aged spirit, born from subtropical heat, black koji, and a century of patience. All three share koji as a common origin, yet each has become something entirely different through climate, land, and human wisdom.
The afternoon brought our first full rehearsal for the final competition. Watching each finalist present her self-introduction, I found myself thinking back to the very beginning, when I watched the finalist announcement on YouTube and thought: I could never do that. Yet here I am. The challenge now is not courage, but clarity. I have more to say than I can fit into a single speech. The next few days will be about finding the words that matter most.
The evening ended with a final dinner at Tamazakari, the restaurant at Ishikawa Sake Brewery. Two finalists surprised us with gifts: one from Okinawa brought individually wrapped WATTA, a local awamori, and sweets for each of us, and one from Ishikawa brought handmade ochoko cups she had made herself. In a season when everyone was running at full speed, they still found time to think of others. That is the kind of people this program brought together. I am grateful for every one of them.
2026 Miss SAKE Fukuoka, Chiyomi Yokoo

























