皆さま、こんにちは!
2025 Miss SAKE 福岡 松口理子です。
4月27日(日)に、第12回ナデシコプログラムが開催されました。
この日は10時から18時まで丸一日かけて、世界共通の日本酒教育資格である「WSET SAKE Level 1」の講座を受講し、最後には試験を受験いたしました。
会場としてお邪魔いたしましたキャプランワインアカデミー様は、南青山に位置するパソナスクエアの16階にございます。
大きなガラス窓の教室からは初夏らしい青空が一望でき、爽やかな心持ちで講義に臨むことができました。
今回私たちの講師を務めてくださったのは、キャプランワインアカデミー認定講師の木下明子様です。
授業のはじめに、まずは木下様よりWSETについて改めてご説明いただきました。
WSET(Wine & Spirit Education Trust)とは
ロンドンに本部を置く世界最大級の酒類教育機関であり、その資格は世界70ヶ国以上で信頼されている国際的資格です。
WSETのSAKE部門創設は、第7回ナデシコプログラムで講義をしてくださった株式会社コーポ・サチ代表取締役の平出淑恵様のご尽力により実現したものでございます。
世界基準の資格ということで、木下様からは「自信を持って受けてほしい」と鼓舞していただきました。また、普段はワインのクラスを教えていらっしゃるとのことで、ワインと比較して日本酒を説明することで、海外の方に伝わりやすくなるというヒントもいただきました。
一日を通して日本酒の基本構造から味わいの特徴、製造方法、さらには香りや味の繊細な表現方法に至るまで、体系的に学ぶことができましたので、本レポートでは授業内容に沿って、日本酒の魅力と奥深さの一部を皆さまにご紹介したいと思います。
日本酒とは何か?
日本酒とは、米、米麹を原料として発酵させ濾したもののことを指します。
ビールやワインと同じ「醸造酒」に分類されますが、日本酒ならではの特徴は、糖化(デンプンを糖に変える)と発酵(糖をアルコールに変える)が同時に進行する「並行複発酵」という独自の仕組みにあります。
主な原材料は以下の3つです。
① 蒸米:食用米とは異なり、心白(しんぱく)という白く不透明な中心部分が大きく、吸水性や蒸しやすさに優れた酒米(山田錦など)が用いられます。元々は硬い米粒の吸水性を高めるため、蒸した状態の米が必要となります。
② 水:主に酒蔵の近隣の水が用いられます。清潔な水であれば軟水・硬水に関わらず使用できるため、仕込み水の硬度によって酒の味にも変化が生まれます。
③ 麹:米に麹菌を繁殖させたもので、米のデンプンを糖に分解する働きを担います。
④ 酵母:酵母とは、糖を分解してアルコールと二酸化炭素を生成する微生物で、日本酒づくりにおける発酵の主役です。香りや味わいにも大きな影響を与えるため、どの酵母を選ぶかが酒質を左右します。
日本酒の製造工程
日本酒の製造工程は非常に複雑ですが、今回は基本となる6つの流れに沿って学びました。
①発酵
日本酒づくりにおいて、発酵の工程はまさに酒の命を育む時間です。仕込みタンクの中で、蒸米・麹・水が混ざり合い、酵母の働きによって糖がアルコールへと変化していきます。「糖化」と「発酵」が同時に行われる「並行複発酵」には複雑なバランスが必要ですので、杜氏の経験と繊細な感性が存分に発揮されます。
②醸造アルコールの添加(任意)
発酵の工程において、醸造アルコールが加えられることもあります。これは、酒粕の風味を引き出したり軽やかな飲み口を実現するためのものです。適切な量を加えることで、味わいに透明感やキレをもたらすことができます。
③上槽
発酵を終えたタンクの中身は「もろみ」という状態で、まだ日本酒ではありません。上槽では、タンクの中で発酵を終えたもろみを、酒と酒粕に分ける作業が行われます。こうして丁寧に濾されたものが「日本酒」となります。
④加水調整(割水)(任意)
製品としての味わいを調整する目的で「加水」が行われる場合もあります。これはアルコール度数を一定に整えるためであり、より飲みやすいバランスに仕上げる大切な作業です。加水を行わなかった日本酒を原酒と呼びます。
⑤火入れ(任意)
火入れと呼ばれる加熱処理が行われます。酵素や微生物の働きを止め、酒質を安定させたり、腐敗を防ぐためです。火入れを行わない日本酒を生酒と呼びます。
⑥瓶詰め
完成した日本酒を衛生的に瓶に詰める工程で、品質を保ちながら出荷に向けた最終段階を整える重要な作業です。日本酒のイメージを表現したラベル貼りもここで行われます。
日本酒の分類と特徴
日本酒は、普通酒と特定名称酒に分けることができ、特定名称酒は精米歩合や発酵温度の違いによって、“大吟醸酒”や“純米酒”など6種類に分類されます。
また、スパークリング酒や古酒など独自の特徴を持つ日本酒もあります。例えば、度数が低く軽やかな口当たりのものが多いスパークリング酒は、日本酒に馴染みがない方やアルコールがあまり得意でない方にも好まれているそうです。
お酒の特徴を正確に知ることで、これから出会う方お一人お一人に、より好みに近い日本酒を提案することができる。そんな日本酒の可能性の大きさを改めて感じました。
私たちは今回、9種類の日本酒のテイスティングも行いました。
テイスティングを行う際には、生産者が意図したお酒の香りと味わいを正確に味わうため、グラスのボウルに触れない、お酒と一緒に空気も口に含むなどの細やかな決まりがあります。
心静かに香りを取り、口に含んだ瞬間の味わい、そして余韻に神経を集中させるその行為には、普段お酒を飲む時には感じられない緊張感と、新しい発見がありました。
どのような意図で、何を表現しようとしたのたろうか…と、造り手の皆様に想いを馳せるプロセスは、作曲家の残した楽譜を分析し、曲を解釈するクラシック音楽にも大きく共通するものがあると感じ、心躍る時間でございました。
また、木下様は香りや味わいを表現するボキャブラリーが大変豊富で、一瞬でどんなお酒なのか想像できるような言葉をお持ちでいらっしゃいました。
私も皆様に分かりやすく、「飲んでみたい!」と思っていただけるようなお酒のご紹介ができるよう、日々感性を磨きながら日本酒を紐解いていきたいと思います。
授業の後半には、日本酒の飲用温度による味わいの違いや、それぞれの温度帯がどのようなお酒に適しているかという知識についても詳しく学びました。
例えば、旨みの強い純米酒や熟成タイプのお酒は燗にすることでコクが深まり、香りがふわりと柔らかな印象になる一方で、吟醸酒や大吟醸酒など香りが華やかなタイプは冷やして飲むことでその芳香がより際立ちます。
同じお酒でも温度によって全く異なる印象を楽しむことができるということを、実際のテイスティングを通して体感いたしました。
また、砂糖(甘味)・塩(塩味)・昆布(旨み)・レモン汁(酸味)・一味(辛味)を少量舐めながら日本酒を味わい、それぞれがどのように日本酒の風味に影響を与えるかも検証いたしました。
口に含んだ瞬間の印象だけでなく、後味や香りの残り方までもが変化することに驚き、日本酒がいかに繊細で多層的な味わいを持つ飲み物であるかを再認識いたしました。
一種類のお酒であっても、温度や食材、シチュエーションによって全く異なる表情を見せてくれる日本酒。その包容力の広さと奥深さに、私は深く感銘を受けるとともに、日本酒を通じてより豊かな食体験を提供できる存在になりたいと感じました。
信頼されるアンバサダーを目指して
授業を終え、いよいよ受験に挑みます。満点での合格を目指し、集中して取り組んだ試験は達成感がありました。結果が出るのはまだ先ですが、合格を信じております!
今回の授業・受験を通して、単に「おいしい」だけでなく、原材料から製造方法、味わいの違い、ペアリングの可能性に至るまで、理論的に説明できる言葉を持つことができました。
Miss SAKEとして、今後さまざまな場面でご縁をいただく中で、つくり手の想いや技術を正確に伝えること、そして飲み手の立場に立って分かりやすく丁寧に伝えることは、双方から信頼されるアンバサダーであるために欠かせない姿勢だと実感しております。
今回得た理論、そして感性の両方をしっかりと自分の中に根付かせ、今後も日々の学びを重ねながら、より一層自分の言葉でSAKEの魅力を語れる存在に成長していきたいと思います。どんな場面でも、自信と誇りをもって日本酒を紹介できるMiss SAKEを目指し、精進してまいります。
丁寧にご指導いただきました木下明子様、ありがとうございました!
最後になりましたが、日本酒に少しでも興味のある方は、ぜひWSET SAKE講座の受講をおすすめいたします!初心者の方でも楽しみながら、日本酒の奥深さを改めて実感できる貴重な機会となるはずです。
【キャプランワインアカデミー WSET SAKE ホームページ】
https://www.caplan.jp/wine/about/sake/index.html
2025 Miss SAKE 福岡 松口理子