皆様、こんにちは。
2025 Miss SAKE 岐阜 中村由希です。
梅雨入りを前に、緑の香りが深まる6月1日(日)、第18回ナデシコプログラムに参加いたしましたのでご報告させていただきます。
東京を離れ、豊かな自然と伝統に恵まれた、美しい金沢での研修の2日目でございました。
この日お伺いしましたのは、
・株式会社林農産(講師:代表取締役社長 林 浩陽様)
・きよし農園(講師:多田礼奈様)
・北陸農政局(講師: 北陸農政局 経営・事業支援部 食品企業課 課長 福田智之様)
・金沢キッチン(講師:丸山順子様)
・石川県立伝統産業工芸館(講師:本田様)
これまでのナデシコプログラムとは少し違った切り口の、農業の側面から日本のこれからを考えるきっかけをいただく1日となりました。
株式会社林農産(講師:代表取締役社長 林 浩陽様)
石川研修2日目は、株式会社林農産様でお米についての授業からのスタートでございました。事前にWebページを検索したところ「23世紀型お笑い系百姓林農産」というキャッチコピーとともに、林農産様の皆様の元気なお写真を拝見いたしまして、大変ワクワクとした気持ちでお邪魔いたしました。
今回のナデシコプログラムでは、普段小学校5年生に向けて行っている授業を受けさせていただきましたが、新たに学ばせていただくことばかり。
日本で稲作が始まったのはおよそ2500年から3000年前、石川県では約2650年前のもみの柄の土器が発見されたそうです。それほど古くの歴史を持ちますが、意外にも白米の歴史が始まったのは江戸元禄のころ。当時の技術では精米が甘かったそうで、現在流通している白米と見比べますと大きく差がございます。私たちが現在いただいている真っ白なお米は、70年ほど前の高性能の精米機の開発あってのこととのことでした。
私たち日本人の生活になくてはならないお米。他の農作物と違い、米は同じ水田で何千年も作り続けることができる稀な存在で、さらに一粒から500〜1000粒も生産することができる優れもの。しかしながら、このように優れていながら、なぜ歴史の中で度々飢饉が起きてきたのでしょうか。
その答えは、お米の品種改良にありました。米の大元は古代米と言われる赤いお米。これは、たいへん強く、気候の変化などにも左右されずにすくすくと育つそうです。私たちが現在いただいているうるち米は、この古代米の中から一部のお米を掛け合わせてできたもの。古代米と違い様々な条件によって収穫量が左右されてしまうため、古来から農家はリスクヘッジのために田んぼの1割ほどは古代米を作っていたそうです。
しかしながら飢饉が観測された江戸時代では、いくつかの藩の方針で古代米を作らず全ての田んぼでうるち米を作ってしまったことによって、悪条件によって稲作がうまくいかなかった結果、飢饉が引き起こされてしまったそうです。
昔の人の知恵というのは素晴らしく、私たちはこういった大惨事をくりかえさないためにも自分たちの生活に関わる「食」や「農業」について学ばなくてはいけないのだ、と感じました。
林様は普段、小学生たちに向けて食育や稲作の授業をされていらっしゃいます。
日本で稲作が根付いてくれたことが日本列島が歴史を育んでこれた理由の一つだとすると、私たちのルーツを知るため、そしてこれからの未来の食文化を繋いでいくためにも、林様のお取り組みが広まっていってほしいと思いました。
今回私たちが受講した様子は、林様のYoutubeにアップされておりますので、ぜひご覧ください。
https://youtu.be/jy5g3Cuau_A?si=rH2C19Z6SR0N8OGP
時間があればもっともっと学びたい、そう感じさせてくださる素晴らしい授業をありがとうございました。
北陸農政局様のお話(講師: 北陸農政局 経営・事業支援部 食品企業課 課長 福田智之様)
バスでの移動の時間を使いまして、1日目よりナデシコプログラムにご同行いただいておりました北陸農政局の福田様より、北陸の農産物と食文化についてのお話をお伺いいたしました。
豊かな食文化を誇る石川県ですが、農業の観点では意外な側面を垣間見ることができました。酒どころ、加賀野菜などといった印象を強く持っておりましたが、驚くことに、農産業は全国的に見ると盛んではないそうです。お野菜の生産は全国45位、お米は43位。しかしながら、地域資源に恵まれた石川県で生産される農産物の品質は素晴らしいものです。
また、環境に配慮した農業の取り組みとして、温室効果ガスの削減や、生物多様性保全への配慮として化学農薬・化学肥料の削減などにも北陸農政局様主導の元でお取り組みになっているそう。
こちらは全国的なものではありますが、生産者の方々が行った環境にやさしい取り組みに応じて、等級ラベルを表示することを農林水産省に登録するというもの。
昨年の3月からの運用開始とのことで、これからさらに積極的に広がっていくこととなる運動とのことで、これからの地球の環境のために、農業の現場でもこのような取り組みを行っているということに大変驚きました。
そして何がこれからの私たちのために良いのか、消費者の私たちが見極めていけるように学び続けていかないといけないことが多いのだ、と感じました。
そして食文化につきまして。北陸についての食文化の冊子とともに、能登地区をフィーチャーした郷土料理の冊子を頂戴しました。テレビの画面を通して見ているだけではわからない魅力が余すことなく書かれていました。
独自の食文化に優れた能登半島は、昨年の地震によって甚大な被害を受け、今も復興の真っ只中。人々が震災以前の生活を取り戻すために私たちがお手伝いできることはそう多くないかもしれません。しかしせっかく石川県にお邪魔し、素敵なご縁をいただきましたからには、微力ながらも能登魅力を周りの人々に伝え、関心を持っていただけるように努めていきたいと思います。
きよし農園(講師:多田礼奈様)
23歳でお祖父様、お祖母様より、きよし農園を受け継いだ多田様。学生時代より農園の仕事を手伝うのがお好きだったそうで、「農業は食を支える仕事で大事だから無くしたくない」という想いで引き継ぎ、今年で10年目を迎えられるそうです。
現在はへたむらさきなす、金沢柚子、ねぎ、など多様な農作物をお取り扱いでいらっしゃるそうで、農薬は最低限しか使用せず、化学肥料は使わずに美味しいお野菜を栽培することにご尽力なさっています。
この日はナスの畑を見学させていただいたのですが、遠くまで艶々としたナスが実っているのはとても素敵で美しい光景でした。
もぎたてのナスを拝見したのですが、スーパーで売っているものよりも棘が目立っておりました。気になって調べてみたところ、鮮度の高いナスは棘が鋭いそう。日常で目にしているお野菜も畑で見ると新しい気付きがあり、大変貴重な経験でした。
私の祖母は趣味で家の裏庭で無農薬野菜をつくり、田舎から私たちにいつも野菜を送ってくれておりました。家庭菜園ではありますが、祖母が野菜作りに魅了されていた理由の一つに、こういった畑でしかできない経験があったのかと思うと、より一層農業への興味が深まりました。
力仕事も多く、休みなく様々なお手入れをしなくてはいけない農業のお仕事。お祖母様からは農園を受け継がなくてもいいとおっしゃられたそうですが、一念発起し若干23歳で引き継がれた多田様。
農業は天候によって左右されることが多く、獣害被害も多いそうです。さらにきよし農園様は里山で寒暖差もあるため、始められたすぐはご苦労なさったことも多かったそうですが、そういった大変なことも含めてお仕事の魅力を感じていらっしゃるそうです。
この日私たちがお話を伺っていたカフェは、3年前にオープンされたそう。たくさんの人に癒される体験をして欲しいので、自分で作るのが面倒な人でも気軽にお野菜などを食べられるように、加工食品などのお取り扱いも豊富とのこと。実際にお野菜を食べてから興味を持って購入してくださるお客様も増えたそうで、農業を通して実現なさりたいことが少しずつ実っていらっしゃるとおっしゃっていました。
食べることは生きること。農家の皆様がいてこその私たちの生活です。こういった食の普及も含め、日本人が豊かに過ごせる食文化を支えてくださる農家の皆様に感謝しなければならないと強く感じました。
また、農園のお仕事、そしてカフェの経営も手掛け、そして子育てにも勤しみながらも、農業や日本の未来についてご尽力なさっている多田様のお姿に大変勇気をいただきました。同年代の女性として、ご活躍なさっている女性がいることの心強さ。私も微力ながら、これからの日本のためにできることを模索してまいります。
金沢キッチン(講師:丸山順子様)
昼食は金沢キッチン様にていただきました。
里山の自然に囲まれた古民家で金沢の地で採れたお野菜などをいただくことができるだけでなく、お野菜の成り立ちや、育つ環境などを感じることができるお取り組みをなさる丸山様。
消費者と生産者がつながる場として、子供達に向けた農業を通した食育スクールや、大人向けお料理教室を積極的に開催されていらっしゃいます。
今回はナデシコプログラムのために、地元や北陸のお野菜を使ったお料理に加え、酒粕を使用したメニューも組み込んだ特別メニューをご用意くださいました。
身体に優しいおかずが詰まったお膳はどれも美味しく、採れたてのいちごを使ったというムースはこれまで食べたどのいちごのデザートよりもフレッシュで濃厚な味がしました。
普段私たちがいただくお野菜などの食材は、農家さんから私たちの手に届くまでにたくさんの時間と多くの人々を経由します。もちろんそれでも美味しいのですが、生産されたものをすぐにいただくというのは、いつもの食生活と全く違う体験となるのだと実感いたしました。
丸山様がご主催なさっている子ども向けの食育スクールでは子どもたちが成長するだけでなく、お野菜育てることを通して子どもたちが自分たちの食生活に目を向け、何を選んでいくかを学んでいくことができるのだと思うと少し羨ましいような気がいたしました。
小さな頃から生きることの一番の糧と向き合い、食の大切さを学んだ子どもが大人になった未来は、日本でも農業が大切にされる環境になっているのでしょうか。
10年後、20年後の未来、日本の食文化が豊かで安全であるように、私ができることを探していけたら嬉しいです。
石川県立伝統産業工芸館 いしかわ生活工芸ミュージアム(講師:本田様)
研修の締めくくりは、石川県の伝統産業を余すことなく堪能できる、石川県立伝統産業工業館いしかわ生活工芸ミュージアムにお邪魔いたしました。
1日目は作り手の皆様の視点から、そしてこの日は職員の本田様に館内ツアーをしていただきながら学ばせていただき、新たな気付きも多くありました。
石川県には、10種類の国の指定、6種類の県指定、そして20種類の希少伝統工芸の計36種類もの伝統工芸があるそうです。12年以上の実務経験を経て伝統工芸士の資格を取得した職人をはじめとして、たくさんの人々が産業に携わり、石川県の伝統工芸を支えています。私たちがよく耳にする工芸だけでなく、多種多様な伝統工芸がここでは紹介されていました。
着物を扱うお仕事をしている私にとって一番身近な石川県の伝統工芸は加賀友禅です。
京都の友禅とは違った味わいを持ち、絵画として美しさも兼ね備える加賀友禅は憧れの伝統工芸の一つ。こんなに間近で拝見できて幸せでした。
このミュージアムのすごいところは、展示品になんとお値段が記載されているところ。
全ての作品ではありませんが、工芸品として販売されているものはお値段を拝見することができます。職人さんが情熱を注いでいるからもっと高くてもいいのに、と思ってしまうお品もあり、希少な伝統文化ではありながらも工芸品として日常に使用される商品とのバランスの難しさを感じました。
また、本田様から時価3000万円する展示があるとご案内いただきましたが、圧巻でございました。
伝統文化を紹介するだけでなく、この金箔張りのお茶室の展示のように、金沢のイメージを持って訪れる人の予想を大きく超えて楽しませてくれるミュージアムの展示の素晴らしさ。伝統文化を伝えていく石川県の皆様の文化振興への向き合い方に、たくさんのことを学ばせていただきました。
伝統文化、そして農業を通した日本の食文化の2つの柱を通して多くの学びと気付きを得ることができた石川研修。お酒だけでなく、伝統文化や食文化も含めた日本という存在を、国内外の人々に知っていただくためのハブとなるMiss SAKEの私たちにとって、必要なことが凝縮された濃密な2日間でございました。
これからのMiss SAKEの活動の中で、そして人生を通して、日本と日本の伝統文化のためにできること。また、未来を担う子供達のためにできること。もっともっとたくさんのことを学び、吸収し、行動を起こしていける人になりたいです。
ナデシコプログラムは残すところあと2回となりました。第19回、20回も、実り多き日となりますように。
2025 Miss SAKE 岐阜 中村由希