〈内容〉
- 和紙漉き体験 小津和紙 高木清様
- 江戸切子作成体験 江戸切子の店華硝取締役 熊倉千砂都様
今回のナデシコプログラムは、東京・日本橋に息づく古き良き伝統工芸を見学・体験させて頂きました。
【時を超える伝統工芸・和紙】
小津和紙様では、和紙・関連小物を販売する店舗、和紙文化・日本文化の学びの場である小津文化教室や小津史料館、和紙で作られた様々な作品が鑑賞できる小津ギャラリーや小津和紙照覧、そして和紙製作を体験できる手漉き和紙体験工房を見学させていただきました。
幼い頃より書道や折り紙に触れてきた私にとって和紙は身近な存在で、和紙の香りやあたたかみに囲まれることができる非常に心地よい空間でした。
書道の半紙に向かう時など、和紙に向き合うと自然と心平らかに整うような気持ちになり、その心の静けさが私はたまらなく好きで日本人としてのアイデンティティを再認識するひとときでもあります。
中国から伝来し約1300年の歴史を持つ和紙は、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)の3種の木材から作られます。
一本の木から丁寧に皮をはぎとり何度も何度も柔らかくして叩く作業を繰り返すことで白く美しい繊維に変わります。
島根の石州半紙、岐阜の本美濃紙、埼玉の細川紙はユネスコ無形文化遺産にも登録されていることを学び、手間を惜しまず最高級のものを作り出す”日本のものづくりの魅力”に改めて深い感銘を受けました。
代表県である長野県では”内山紙”と呼ばれる和紙が作られております。
強靭で通気性、安定性、保湿力に優れていることから障子紙として広く用いられおり、自宅の和室でも1度も破れることなく丁度よい日の光を部屋に差し込ませる障子紙として大活躍しています。さらに、調べてみると、この内山紙がラベルとして使用している木島平村の「内山ノ雫」という日本酒が醸されていることを知り、奥信濃の魅力が詰まったお酒をぜひ一度味わってみたいと心が高鳴りました。
小津ギャラリーでは、「東海道名所膝栗毛画帖」(十返舎一九の「東海道中膝栗毛」をもとに弥次さん喜多さんの二人の珍道中が風景に描き込まれた作品)が展示されていました。
美しい光沢のある和紙に鮮やかに描かれた日本の絶景に、一瞬にして目を奪われ心が潤うような感覚を覚えました。
これらは和紙に描かれているこそ、私たちの目に、心に訴えかけてくる作品なのでしょう。
これがもしデータとして取り込まれた映像であれば、どんなに高画質であったとしても、強く心に響くまでの感動は得られないように思うのです。
目の前の絶景への感嘆を、和紙という媒体を通すことで、数百年後であっても当時のまま色褪せず観る者に訴えかけることができる。
丁寧に作り込まれた丈夫さと作り手の方のあたたかみを感じられる和紙であるからこその芸術であると感じました。
そして手漉き和紙体験工房では、紙漉きから乾燥までの工程を実際に実体験させていただきました。
教えてくださった高木清様はいとも簡単そうになめらかな和紙を作っていらっしゃいましたが、実際に自分でやってみると少しの乱れですぐにしわができてしまい大変難しい作業でした。
出来上がった生和紙を手にした時の感動もひとしお。自分の体温を感じるような柔らかな和紙をつくることができました。
和紙に関する楽しいトークを交えながらご教授下さった高木清様より「和紙は長く使えば使うほど水分がなくなるので強く丈夫になる。」というお話を伺いました。
時を経て魅力を増す和紙のように、私自身も魅力を増しながら年を重ねていける女性になりたいと感じました。
【人の手が作り出す宝石・江戸切子】
江戸切子の店 華硝様では、江戸切子の歴史や紋様にまつわるお話を伺った後、世界に一つだけの自分の江戸切子を作成体験させて頂きました。
江戸切子は二層構造のガラス生地のうち色ガラス層を削ることで鮮やかなカットが生み出されています。
店内には、なめらかな曲線のカットや髪の毛よりも細い繊細なカットが施された美しい江戸切子が並んでおり、宝石を眺めているような気分になり心弾むひとときでした。
最も驚くべきことは、全ての江戸切子は一つ一つ職人の方の手作業で作られていることです。
実際に切子作成体験をさせて頂くと、ずれなく正確に適切な深さでカットすることがどれほど高度な技術を要するのかを肌で感じました。
繊細で精巧な美しい”ものづくり”は世界に誇ることのできる日本ならではの素晴らしい技術であると改めて実感する経験となりました。
切子に刻まれる様々な紋様には縁起の良い意味が込められているそうです。
長寿を願う『菊繋ぎ』、子孫繁栄を表す『玉市松』、子供の成長や健康を願う『麻の葉模様』など伝統的な紋様に加え、華硝様では五穀豊穣、繁栄の象徴として『米つなぎ』とう新しい紋様を開発されています。
この『米つなぎ』は見た目の美しさのみならず、カットにより手に吸い付くような触り心地を生み出し実用性にも優れています。
江戸末期の日本橋で創出された江戸切子。比較的に新しい伝統工芸であることを生かし、伝統を守りつつモダンアートとしても挑戦し続けられる点が最大の魅力であると感じました。
↑自分で作成した切子に非常に愛着がわき、以前祖父から譲り受けた江戸切子と並べて自室の机に飾って眺めています。薄暗い時には神秘的な静かな輝きを持ち、日の光に当たると全く違う表情で煌びやかに輝く切子に心をすっかり奪われております。
効率化が推進される現代で、手作業にこだわり真心を込めて作られた伝統工芸品。それを大切に慈しんで使わせて頂くこと。SDGs ”つくる責任 つかう責任”がここにあるように感じます。
伝統工芸品が持つぬくもりに深く触れることができ、和の心の充足感に満ちた一日となりました。
小津和紙様、江戸切子の店 華硝様、このたびは日本の伝統工芸の魅力を実体験を通して学ぶことができる大変貴重な機会を誠にありがとうございました。
2021 Miss SAKE 長野代表 糟谷恵理子