Miss SAKE News/Blog

第18回ナデシコプログラムレポート〜石川県の農業と伝統工芸の未来と可能性〜2025 Miss SAKE 秋田 嶋宮里紗

皆さん、こんにちは。2025 Miss SAKE 秋田 嶋宮里紗と申します。

今回は、2025 Miss SAKEファイナリストで石川県に1泊2日の合宿研修に行って参りました。

合宿二日目は、石川県で農家をされている方々に農業の現場や課題解決に向けた取り組みをお伺いしたり、有機野菜を取り入れられている金沢キッチン様や伝統工芸館様を訪れ地場の産業を支えておられる方々のお話も聞くことができました。

研修内容は以下の通りです。

・株式会社林農産様 (講師:代表取締役社長 林 浩陽様)

・きよし農園様 (講師:多田礼奈様)

・北陸農政局様 (講師:北陸農政局 経営・事業支援部 食品企業課 課長 福田智之 様)

・金沢キッチン (講師: 丸山順子様)

・石川県立伝統産業工芸館

株式会社林農産様(講師:代表取締役社長 林 浩陽様)

林様からは、持続可能な農業と地域との共生について、熱意ある講義をいただきました。まず、稲作の歴史について深い学びがありました。稲は「藁 → 穂 → 籾 → もみ殻 → 玄米 → 麴 → 白米」という工程を経て、私たちの食卓に届きます。日本では2500〜3000年前から稲作が始まり、林様の地元・石川県野々市では2600年前のもみ殻が出土していることからも、その長い歴史がわかります。白米が一般に食べられるようになったのは元禄時代以降で、それ以前は玄米が主流でした。

白米が「銀シャリ(三分づき)」として普及したことで、江戸時代にはビタミンB1不足から「脚気(かっけ)」が流行。特に参勤交代で江戸に赴いた武士たちの間では「江戸煩い」とも呼ばれていました。現代では他の副菜から栄養が摂れるため問題になっていませんが、本来の完全食は玄米であることを教えていただきました。また、戦後、白米が広く食べられるようになった背景には、佐竹氏による精米機の発明があったとのことでした。林様の精米機のメーカーにも「satake」との記載があり、歴史がこうして現代にも引き継がれているのかと驚きました。

稲作が日本に適している理由についても、モンスーン気候の水資源の豊富さや、1本の苗から500〜1000粒も収穫できる高い効率性を挙げられ、「お米はまさにスーパーフード」と語られました。ちなみに、お米と比較して、大豆は1粒で80〜120粒しか収穫できないとのことです。気候や風土、効率性の観点から日本で稲作が発展したということは、頭では理解していたものの、人に説明するだけの知識と自信を持っていなかったため、今回のお話を聞き、改めて母国を支える欠かせない産業なのだと感じました。

また、農業の価値を国の象徴的な存在である天皇がどれだけ重視しているかにも触れられました。天皇杯(農林水産祭)の25部門中7つが農業関連であり、商工分野には存在しないことからも、食と農の重要性が際立っています。林様ご自身も、平成4年に天皇杯を受賞されており、受賞理由は、パソコンを活用して線形計画法を導入し、種まき回数を最適化するなど、データを活かした効率的な農業経営を実現した点にありました。

農業に携わるプロである林様に近年の農業の現状を伺うと、気候変動の影響についてお話してくださいました。従来の「コシヒカリ」に適していた26℃の水温が30℃まで上昇している現状に対応するため、暑さに強い新品種「にじのきらめき」が注目されていますが、種の入手は困難という状況だということを知りました。

林様は、農業に携わる中で、「食育」にも力を入れられております。年間30回以上、小学校や幼稚園などで授業を行い、「田んぼにゴミを捨てないでほしい」というメッセージを子どもたちに伝えられています。田んぼを知らない世代が増えていく中で、「田んぼを敬う心」を育むことの重要性を訴えていました。特に印象的だったのは、田植え時に3本の苗を植える理由を「田植えの呪文」として伝えていることでした。その呪文とは、「1本目は鳥さんの分。2本目は虫さんの分。3本目は、みんなの分。」です。この言葉には、他者と共生するという農業の本質が込められており、食の背後にある命への思いやりを感じました。

林様のお話から、農業とは単なる生産活動ではなく、人の暮らし・地域・環境・文化と密接に関わる「生き方」そのものであると実感し、稲作を通じた環境保全、未来志向の経営、そして子どもたちへの食育に真剣に向き合う姿に、心を打たれました。

また、私自身、食品業界での勤務経験があり、消費者に農産物の魅力を伝えることの重要性を感じてきました。林農産様のような取り組みは、その理想形のひとつであり、今後のMiss SAKEとしての活動でも、田んぼや米づくりの価値を自分の言葉で発信していきたいと強く思いました。

きよし農園様(講師:多田礼奈様)

続いて、石川県金沢市にある「きよし農園」を訪問し、代表の多田礼奈様にお話を伺いました。

「きよし農園」は、多田様のお祖父様の清様が定年退職後に本格的に取り組まれた農園で、金沢の伝統野菜である「ヘタ紫なす」や「金沢ゆず」などを栽培しています。多田様は、23歳の時にお祖父様の清様がご病気になられたことをきっかけに農園を継ぎ、現在は代表として農業に従事されています。

訪問時には、イガイガとしたトゲが特徴的な「ヘタ紫なす」の畑を見学させていただきました。このナスは、しっかりとした食感と濃い味わいが特徴です。多田様のおすすめの調理法は、ラップで包んで電子レンジで加熱する方法で、手軽ながら、素材の美味しさが際立つ調理法を教えていただきました。

農業は、少し想像しただけでも大変なイメージが多く、天候に左右され体力も必要とする中、多田様は、「人の“美味しい”が何よりのモチベーション」と語られておりました。美味しい作物を育てるためには、知識や技術、そして資金も必要であり、「農業がちゃんと儲かる仕組みを考えていきたい」と、持続可能な農業の実現に向けて日々取り組んでおられる姿勢に感銘を受けました。

また、多田様は、農業に携わるだけではなく、子育てと農業を両立する母親としても奮闘されていらっしゃいます。「子どもと過ごす時間が短くても、自分がご機嫌でいることが一番大切。その分、合間の時間でしっかりと向き合うようにしている」との言葉に、働く母としてのしなやかな強さと優しさを強く感じました。今後、私自身も自分のキャリアと育児を考える機会が生まれる時に、どちらかを諦めるのではなく、どうすれば両立してご機嫌な自分で居られるのかを考えたいと思うことができました。

多田様のお話を伺い、農業の現場におけるリアルな課題と、それに向き合う前向きな姿勢に強く心を打たれました。日本酒もまた、自然の恵みと人の手から生まれるもの。Miss SAKEとして、食と農を支える人々の声を伝え、地に根ざした文化や暮らしの魅力を、これからも丁寧に発信してまいりたいと思いました。

北陸農政局様 (講師:北陸農政局 経営・事業支援部 食品企業課 課長 福田智之様)

福田様からは、石川県における農林水産業の特徴と現状について講義いただきました。石川県は、四季の変化に富み自然環境も豊かであることから、一見「農業県」のように見られがちですが、実際の農業産出額は全国47都道府県中43位というデータが示すように、農業の規模としては大きくありません。しかしながら、地域内での地場消費率が高く、生産された農産物が地域の暮らしと密接に結びついている点が大きな特徴ということを教えていただきました。また、令和6年の能登半島地震により、特に能登地域では農地に亀裂が入り、地盤が割れるなど深刻な被害が発生しており、復旧には時間と技術を要する厳しい現状があることも教えていただきました。

加えて、環境に配慮した農業の「見える化」を推進する農林水産省の取り組み「みえるらべる」についてもご紹介いただきました。これは、温室効果ガスの排出を慣行栽培より20%以上削減したり、化学農薬・化学肥料を5割以上削減した農産物に与えられるラベル制度です。消費者が環境負荷の少ない選択をしやすくするという意味で非常に有効な取り組みであると感じましたが、一方で、生産者にとっては技術的負担が大きいことも課題として挙げられていました。また、北陸地域の農業・食に携わる人々を応援する「+みどり計画」の紹介もありました。これは地域の環境保全型農業を支援し、イベントなどでは著名人や参加者が「+みどり宣言」として自分にできることを発信する活動も行われているそうです。私は、以前、食品業界に勤務していたため、特に「みえるらべる」の取り組みに関心を持ちました。ラベルや表示を通じて消費者に農産物の価値を伝えることの重要性を感じていたため、今後よりラベルが普及され、環境と経済の両立に向けた橋渡しになれば持続可能な農業に繋がるのではないかと感じました。また、能登地域の震災被害の深刻さを福田様よりお伺いし、農地の損壊が単に生産面の問題にとどまらず、地域の暮らしや文化にも影響を与えていることを実感しました。Miss SAKEとして活動する今、自分が今からでもできることを大切にしながら、石川県、そして能登の現状と魅力を丁寧に伝えていきたいと思います。

金沢キッチン様 (講師: 丸山順子様)

昼食には「金沢キッチン」様を訪問し、金沢の豊かな自然と食文化を体感するひとときを過ごしました。

金沢キッチン様では、提供される料理に使われる食材はすべて有機野菜。地元の山から採れる山菜や、隣町で朝摘みされたばかりのいちごなど、土地の恵みを最大限に活かしたおもてなし料理が魅力です。

酒粕を使用した味醂漬けのサバや、白和えなど、発酵食材を活かした料理の数々やいちごをふんだんに使ったふわふわのムースが提供され、日本の伝統的な食文化と身体へのやさしさが感じられました。酒粕の豊かな香りと深みのある味わいは、日本酒に通じる発酵の奥深さを再認識させてくれました。

お食事の提供だけではなく、金沢キッチン様では子どもたちへの食育にも力を入れているというお話も伺い、料理を通して命をいただくことへの尊さや、食への関心を育む取り組みが行われている点により魅力を感じました。こうした活動が未来の食文化を支える土台になると感じるだけでなく、子供の頃から地産地消を意識することができる素敵な取り組みだと思いました。

食事の空間もまた、心を豊かにしてくれるものでした。漆塗りのお部屋、絹の障子といった伝統的な素材に囲まれた空間は、凛とした美しさと温もりにあふれ、日本の“暮らしの美”を体感できる場でもありました。金沢キッチンでのひとときは、地元の素材と文化を大切にしながら、五感で「いただきます」の心を育む時間となり、Miss SAKEとして、こうした丁寧な食と文化の在り方を、多くの方に伝えていきたいと思いました。

石川県立伝統産業工芸館

石川県立伝統産業工芸館では、本田様より館内のご説明を受けながら、石川県の伝統工芸品や文化を体感させていただきました。

中でも「金箔の部屋」は特に印象的で、420年の時を経て伝統工芸と建築の匠の技により、豊臣秀吉の「醍醐の花見屏風絵」の庵が蘇らせられています。この空間は、優しく穏やかな金箔特有の発色が朱色の毛氈(もうせん)と調和し、極薄の繊維で施された格子から漏れる光が織りなす幽玄な雰囲気を楽しめる場所でした。訪れる人は、まるで歴史の世界に入り込んだかのような神秘的な体験ができます。目が眩しいほど煌びやかな空間は、天下を取った豊臣秀吉の威厳や風格を感じられますので、一度は見ていただきたいです。

また、石川県の風土や信仰、文化に深く根ざした多様な伝統工芸品展示品36種類を、「衣・食・住」や「祈・遊・音・祭」といった暮らしや文化のテーマごとに分かりやすく分類されている展示も圧巻でした。加賀友禅や玉繭から製糸された素朴で温かみのあるの首紬織物など、石川県の伝統的な技術と美意識を感じられる展示が数多くあり、石川県の伝統工芸品の多さに驚きました。

本田様のご説明を受けて最も興味をもった伝統工芸品は、珠洲焼(すずやき)です。

珠洲焼は、長らく途絶えていたものを昭和51年に復活させた伝統工芸品であり、須恵器の系統を継ぎ、釉薬を使わずに穴窯で焼き締める技法が特徴です。珠洲の土は鉄分を多く含み、1200度で焼くと薪の灰が溶けて自然の釉薬となり、渋く黒灰色の美しい色合いになります。

この焼き物は、自然の素材を活かした独特の味わいが魅力なのですが、林田様のご説明の中で珠洲焼は、光や空気を通さないため、花瓶としても花を生き生きと持続させることができるほか、ビールを注ぐ際のグラスとしては、ビールの味わいがまろやかになり、おいしくいただけると教えていただきました。林田様のご説明を聞き、石川県立伝統産業工芸館の1階にある「ミュージアムショップ」にて、父の日の贈り物として「珠洲焼(すずやき)のグラス」を購入いたしました。

珠洲焼(すずやき)のグラス以外にも、伝統の技術を活かしつつも現代風にアレンジされた逸品ぞろいで、見ていてとても楽しい時間でした。石川県立伝統産業工芸館の入口を進んですぐ左手には、伝統工芸士による実演ブースもあり、訪問者は実際に手を動かして技術を体感できる機会が設けられています。

伝統工芸の奥深さや技の細やかさをより身近に感じる施設があることで、地元民のみならず、県外の方も石川県ではどのような伝統工芸品があるのかや、その伝統工芸品がどんな歴史があり、現在に継承されているかを学ぶことができました。伝統工芸品の魅力と価値を守るために取り組まれている方々の想いを知り、改めて日本の日本文化の奥深さと偉大さを肌で感じることができました。

今回の合宿では、石川県にご縁があり石川県の歴史や伝統工芸に触れることができたので、今後は、地元秋田県や他の県にも視野を広げて、知識を深めていきたいと思いました。

2025 Miss SAKE 秋田 嶋宮里紗

 

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