第9回ナデシコプログラムレポート
<内容>
- 株式会社かまわぬ専務取締役 高橋基朗様 ~手ぬぐい講座~
- 2016 Miss SAKE Japan 田中沙百合様 ~「道」について~
- 名古屋大学客員教授 佐藤宜之様 ~コロナ禍で会食が許されない今、日本酒を考える~
【手ぬぐいに隠された暮らしの知恵】
第一部は株式会社かまわぬ専務取締役でいらっしゃる高橋基朗様に手ぬぐいの歴史・作り方についてご講義を賜りました。
私は使っているうちに肌に馴染んでくるような手ぬぐいの優しい触り心地が好きで入浴時に毎日使っております。
手ぬぐいは木綿の平織りの布であるため、使っているうちに糸が少しずつ緩んできて生地が柔らかくなるという経年変化を楽しむことができるといいます。
かまわぬ様で扱われている手ぬぐいは職人の方々による手作業で作られており、”注染”という染め方を採用しています。
東京の伝統工芸でもある”注染”とは明治時代にイギリスより入ってきた染色方法で、渋紙といった型紙や糊付けを行うことで一度に多色での染め分けができ、塗料が下に染み込んでいくために裏表のなく染められることが特徴です。
日常的に使う頻度としてはタオルの方が増えてきてしまっている中でも、手ぬぐいには変わらない魅力がある。それは切りっぱなしの布端に隠されていました。
切りっぱなしであることにより、
①汚れがたまらず衛生的であること
②温暖湿潤の日本の気候に合わせて速乾性に優れていること
③手で裂きやすくとっさの時に大きさを変えて違う用途に使えること
を可能にしていると学ばせていただきました。
また、手ぬぐいは大きさの規格が決まっていないのですが、これは着物を作った後の反物の切れ端から作られていたという江戸時代からの名残が理由にあるといいます。
反物を余すところなく活用し、作られた手ぬぐいをさらに裂いて使って再利用する、日本人の”もったいない精神”と暮らしの知恵に深く感銘を受けました。日本には江戸時代からすでに、SDGsのゴール12~つくる責任・つかう責任~の考え方が根付いていたことに気が付きました。
ご講義の後には、手ぬぐいを使ったティッシュボックスと瓶の包み方を教えて頂きました。鳥獣戯画のかわいらしい絵柄の入った素敵な手ぬぐいで包むと、ティッシュボックスと瓶が華やかで粋な仕上がりになりました。
使い捨ての紙袋らビニールケースなどを使わずに手ぬぐいで包むことで、ゴミを削減しSDGsへの取り組みにもつながります。デザインの美しさだけでなくエコな一面も持ち合わせている手ぬぐいの魅力にますます魅了されました。
【日本一になるには】
第二部は、2016 Miss SAKE Japanの田中沙百合様に「Miss SAKE Japanになるまで、そしてなった後の経験談」をお話しいただきました。
剣道五段を有しておられる田中様は、勝負や修練で培われた精神力や忍耐力が自分の強みだとお話しくださいました。
「道」とは例で津を重んじる、自分自身を高めてくれるものだとのことです。
私は「医道」を志して日々励んでおります。私の軸にある社会貢献の精神が、この道を極めたいと思うことに表れているように思いました。
田中様のお話の中で二つの言葉が印象的に心に残りました。
「どんな時も私を手放さない」「真実だけが魂を打つ」というお言葉です。
自分自身を大切にすることの重要性を改めて学ぶことができました。
「私」を受け入れて、自分に足りないことは何か、その一方でそんな自分だからこそできることを前向きに考えていくようにしてまいりたいと思いました。そしてそれを十二分に発揮できるよう、入念な準備やイメージトレーニングを実践してまいります。
【日本酒の世界進出のために本当に必要なこととは?】
第三部は、財務省でのお仕事の傍、名古屋大学客員教授としてご活躍されている佐藤宣之様にご講演を賜りました。
日本酒マーケティングの現状や未来に対して疑問を投げかける形で、日本酒の世界進出の活路を開くような画期的なお話を伺うことができました。
Q.コロナの影響で日本酒が売れなくなったのか?
コロナ禍で飲食店の営業に制限が出たことにより日本ではお酒全体の売り上げが大きく落ちました。しかしヨーロッパでは通販での需要が高まり、ワインの売り上げはむしろコロナウイルス流行前よりも上がったといいます。
この違いは販売方式にあり、日本酒は飲食店向けが主流で個人向けの販売ではなかったことにあると佐藤様はお話しくださいました。このことを伺い、第1回緊急事態宣言が発令していた時、好きな日本酒を取り寄せようにオンライン購入できなかった経験を思い出しました。
Q.では日本酒のマーケットはどうすればいいのか?
日本酒を国際化するには、高額な輸送費や管理費、人件費など数多くの障壁があります、だからこそ日本酒を”ブランド品”として売り出すことが必要だと佐藤様は考えていらっしゃいます。
戦略的なマーケティング市場としては”パリ→ロンドン→ニューヨーク”の順で広げていくとよいとのこと。
この順は”ブランド力の育成→お酒の中心地での評価→発信力”といったステップから裏付けられています。
日本酒のブランド力を高めることが国際化の第一歩として欠かせないというお話は、平出様より伺ったお話と重なるところもあり非常に興味深く感じました。
ご講義を受けて、Miss SAKEというアンバサダーとしてブランディングに自分がどう関わっていくかを考えました。
一つは生産者の方が日本酒の良さを最大限発信できるようなサポートをすることです。
これができるようになるためには、味以外にも歴史や造り方を含めてより深く日本酒の魅力を学ぶ必要があると感じます。
もう一つは多角的な視点で日本酒をとらえることです。
国際化を阻む不都合な障壁にも目を向けて解決策を考える視野の広さ・根気強さも求められているように思いました。
高橋基朗様、田中沙百合様、佐藤宣之様、このたびは貴重なお話を誠にありがとうございました。
2021 Miss SAKE 長野代表 糟谷恵理子