皆さん、こんにちは。
2023 Miss SAKE Japan 山田琴子です。
軒のつららが朝日にきらめいていた1月20日、目黒区教育委員会主催、NPO法人目黒ユネスコ協会主管のもと、「~UNESCO無形文化遺産登録を目指す~日本酒の文化とその魅力について」という講座にて弊社団顧問でいらっしゃいます門司健次郎様と2023 Miss SAKE Japan 山田琴子が講師を努めさせていただきました。
<ユネスコ文化講座>
NPO法人目黒ユネスコ協会様は、「ユネスコの理念や国際理解を深める学びの場」として年に数回、ユネスコ文化講座を開催されております。
これまでのユネスコ文化講座の内容といたしましては、世界遺産、海外事情、伝統文化紹介など、様々な権威ある専門家の方々による講義を開催されており、私Miss SAKEもこの度講師としてお手伝いができましたこと大変光栄でございました。
<~UNESCO無形文化遺産登録を目指す~日本酒の文化とその魅力について>
この日は、「ユネスコ無形文化遺産登録を目指す日本酒の文化とその魅力について」というタイトルの元、講座が開催されました。
大変嬉しいことに、公募の80名の定員の席はあっという間に埋まってしまい、皆様の日本酒への関心を実感いたしました。中には、この日のために事前に日本酒の本を購入し勉強をしてきたとおっしゃっていたフランス人の方もおり、このような日本酒講座を開催できましたこと大変嬉しく思いました。
講座は、目黒ユネスコ協会 会長 爲季繁様のご挨拶より始まりました。
その後、イラク、カタール、ユネスコ、カナダで大使を歴任された門司健次郎様よりご自身の外交の経験の中でどのようにして日本酒を活用されてきたかのお話をいただきました。
門司様曰く、国際政治上の概念として2種類のパワー(力)があるそうです。それは強制や報酬で相手から自分の望む結果を得るハードパワー(軍事力、経済など)と、それ自体の魅力により相手が自分の望むように動いてくれるソフトパワー(文化、価値観など)です。今日では両者の適切な組み合わせを「スマートパワー」と呼んでいます。
日本の文化や価値観は大きなソフトパワーであり、門司様は、ソフトパワーを活用して「日本酒外交」、そしてマンガ、アニメなどの「ポップカルチャー外交」も推進されたそうです。
外交において会食やレセプションの場は非常に重要であり、外交の様々な場面で日本酒を活用すること、そして日本の文化としての日本酒自体の発信・振興を行うことが門司様の進められた「日本酒外交」でした。
門司様が日本酒の海外普及を始められた90年代初めは、日本酒は外務省でも殆ど使われていませんでしたが、現在では日本政府を挙げて日本酒を含む日本産酒類の普及に努めるようになっています。この間の門司様の具体的な活動についても伺い、門司様の日本酒の振興への多大なる貢献に大変感動いたしました。
その後、門司様より日本酒の現状について、そして今後日本の文化である日本酒を守っていくために私たち日本人が意識しておくべきことを教えていただきました。
現在日本酒の出荷量は1973年のピーク時の4分の1以下に減少しており、日本酒の存在感の低下、社会生活での居場所の喪失、若年層のアルコール離れといった厳しい現実があります。
もっとも、海外輸出は非常に順調で、海外での日本酒の注目度は年々高まっています。世界中の方々が日本酒に注目する中で、一番重要な日本人が日本酒を知らないということは大変悲しいことだなと思いました。
日本人として自国の文化である「日本酒」の価値を再認識し守っていくことが私たちがしなければならないことなのだなと改めて実感いたしました。
<ユネスコ無形文化遺産について>
門司様は、日本酒に新たな価値を付与し、その存在に気づかせる手段として、2014年より日本酒のユネスコ無形文化遺産登録を訴えてこられました。
2022年3月、日本政府は「伝統的酒造り」を正式にユネスコ無形文化遺産に提案し、2024年末にユネスコにて最終決定が行われる予定です。
2003年に作成されたユネスコ無形文化遺産保護条約は、日本が強く推進した条約で、2024年1月現在180カ国が締結しており、678件もの無形文化遺産が登録されています。
日本の無形文化遺産は22件登録されており、「能楽」、「歌舞伎」などの伝統芸能、「結城紬」、「和紙」などの伝統工芸、「山・鉾・屋台行事」や「風流踊」などの伝統行事や祭り、「和食:日本人の伝統的な食文化」などがあります。
世界の無形文化遺産の範囲はもっと幅広く、アルゼンチンタンゴや、インドのヨガ、フランスの香水、中国の書道や鍼灸術、ベルギーのビール文化、古代ジョージアの伝統的ワイン製法など様々なものが登録されています。一覧を見ているだけでも大変興味深いので、是非皆様もご確認ください。
「伝統的酒造り」の登録は、日本酒は単なるアルコール飲料ではなく、日本の文化であると広く内外に宣言するものです。本年末の登録を強く期待したいと思います。
<Miss SAKEによる利き酒日本酒基礎講座>
門司様の素晴らしい講義の後に、私より「日本酒基礎講義」を開催させていただきました。
講義の中では、能登半島地震の直後だったということもあり、応援の気持ちを込めて、能登地方の日本酒を含んだ利き酒をしながらご来場の皆様に日本酒講座を実施いたしました。
この日ご用意した日本酒は以下の4種類でした。
- 石川県 車多酒造:天狗舞 COMON 純米大吟醸 百万石乃白
- 石川県 株式会社 福光屋:加賀鳶 山廃純米 超辛口
- 富山県 立山酒造:特別本醸造 立山
- 岐阜県 白木恒助商店様:達磨正宗 熟成三年
講義の中では、日本酒の作り方の中でも特に重要な「精米歩合」についてや、「アルコール添加」についてお話をさせていただきました。
お客様には、精米歩合やアルコール添加による違いを説明しながら該当する日本酒を2種類づつ利き酒していただくことで、それぞれがもたらす味わいや香りの違いを実際に体験していただきました。
また、日本酒が和食以外にも合わせることができるということをお伝えするために、チョコレートとチーズをおつまみとして用意し、ペアリングの体験もいただきました。
いらしていた方からは、「今まで日本酒のラベルの意味がわからなかったけれど、これからは自分で自分好みを日本酒を購入することに挑戦したい」や「日本酒の味わいの違いや幅広さを体系的に学ぶことができてよかった」など感想をいただくことができ、Miss SAKEとして、日本酒普及へのお手伝いができましたこと、大変嬉しく思います。
主催の目黒区教育委員会様、NPO法人目黒ユネスコ協会様、そして文化講座開催にあたり多大なるご協力をくださいました門司様、そしてお世話になった多くの皆様に改めて感謝の気持ちをお伝えできればと思います。
これからも、日本の文化である日本酒を大切に守っていけるよう、Miss SAKEとして日本酒の啓蒙活動に励んでまいりたいと思います。
2023 Miss SAKE Japan
山田琴子