「〜麹を知る、日本酒学について理解を深める~」
皆さん、こんにちは。2024 Miss SAKE 埼玉 南家果林です。
4月13日の第7回のナデシコプログラムについて報告いたします。第7回はゲストハウス多摩自慢 酒坊様にて行われました。
★プログラム内容
- 麹について(講師:株式会社北村商店 代表取締役 北村公克様)
- 麹生化粧の仕込み、体験(講師:SHARE SENSE 乙部彩佳様)
- 日本酒学とは(講師:新潟大学日本酒学センター 副センター長/経済科学部 准教授 岸保行様 )
お酒に欠かせない麹について、また麹を使った美容法を教えていただきました。また、日本酒学についてもご教授いただきました。
1.麹について
第7回ナデシコプログラムは、株式会社北村商店 代表取締役 北村公克様の講義からスタートいたしました。以下の内容を学習いたしました。
- 日本酒の分類
酒類は大きく「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」に分類されます。
- 醸造酒
日本酒やビール、ワインが該当します。同じ醸造酒であるにもかかわらず度数が異なるのは、酵母の影響のようです。日本酒、ビール、ワインはそれぞれ異なる酵母が必要になります。酵母はそれぞれに特徴があります。ビールの酵母は度数が5〜6度になると死滅します。また、日本酒であれば15~16度で死滅します。醸造酒のアルコール度数は酵母が死滅するタイミングに発酵が弱まることで決まるそうです。
- 蒸留酒
醸造酒を加熱して蒸発させ、その蒸気を冷やすことでアルコール度数を高めています。ブランデーはワインを蒸留したもの、ウィスキーはビールを蒸留したもの、といったように醸造酒と原料は同じでもアルコール度数を高める工程をはさむことで「蒸留酒」と呼ばれるようになります。
- 混成酒
醸造酒や蒸留酒に果汁やアルコールなどを混ぜたものになります。醸造酒や蒸留酒に少しでも何か混ぜると「混成酒」という扱いになるそうです。
- 清酒の特徴
日本酒は「並行複発酵」と呼ばれる発酵をします。並行複発酵とは、醪の中で、蒸米の糖化と発酵が並行して行われます。並行複発酵世界に類を見ない高度な発酵技術と呼ばれており、日本酒が持つまろやかな味わいを作り出す鍵となっています。同じ醸造酒であるワインは単発酵で作られています。
図はお米の断面のイメージです。日本酒に必要な物は主にデンプン層に含まれています。そのため、お米を磨くことでデンプン層以外の層を削り落とします。
- 麹
並行複発酵は「糖化」と「発酵」という2つの化学変化の組み合わせと伺いましたが、麹は「糖化」の役割を果たします。そもそも麹とはカビの一種です。黄麹(清酒、醤油、お味噌など)、黒麹(泡盛など)、紅麴、白麹(焼酎など)があります。糖化はデンプンがブドウ糖に分解されるまでの変化のことを言います。ブドウ糖を酵母がゆっくりと食べることで美味しい日本酒が完成します。そのためには、麹菌がデンプンをどれだけ徐々に糖化させるかが日本酒の味を大きく左右します。日本酒作りにおいて、磨いたお米の表面を乾かすことや、温度管理をしてお米の状態や麹の働きを調整することが重要であり、杜氏さんの腕の見せ所といった工程になります。
2.麹を生化粧の仕込み、体験
SHARE SENSE 乙部彩佳様よりご講義いただきました。1つ前の講義で北村様には日本酒と麹の関わりや大切さを教えていただきました。麹がお酒だけでなく、私たちの美容に活かすことが出来ることを学びました。化粧品だけでなく、体の内側から健康になるための麹の活用法があることを知りました。
体験では以下3つを乾燥麹を使って作成しました。
★化粧水&米麹パック
【必要なもの】
ー材料ー
- 乾燥米麹 25g
- お湯(50〜55度) 200ml
※お湯が熱いと麹菌が死んでしまうため注意⚠️
ー備品ー
- ボール
- ガーゼ
- 化粧水を入れるボトル
- ステンレスボト(保温できる水筒でOK)
- 計量カップ
- ビニール手袋
【手順】
- 米麹をステンレスボトルに全て入れる。
- お湯を全て注ぐ。
- ステンレスボトルの蓋を閉め、少し振ってから2時間放置する。
- ボールにガーゼを被せ、ステンレスボトルの中身を全て出す。
- ガーゼを絞り、水分と米麹を分ける。
水分の部分は化粧水用のボトルに入れて、化粧水として利用できます。
また、ふやけた米麹はそのまま肌に塗ることでパックとして利用できます!
化粧水は冷蔵必須です。2週間ほど使用することができます。
今回は出来立てホヤホヤのパックを手に使用してみました。
左手の方が若干白いように感じます。麹パックの効果として、大きなものは保湿です。保湿されることで、お肌のハリが良くなり、肌が光を反射しやすくなります。その結果美白に見えるというものです。やはりお肌に1番重要なことは、保湿ということですね!
★塩麹
塩麹は減塩に大活躍します。以下の表は食塩小さじ1(約6g)と同等の塩味を加えるための塩麹の量になります。
食塩小さじ1杯の塩味を料理に加えるためには塩麹が小さじ2杯(約13g)必要になります。16%の塩麹を入れたとするとその中に食塩は約2.2g含まれていることになります。よって、
6g(本来入れたい食塩の量)ー2.2g(塩麹に含まれる食塩の量)=3.8g
の塩分の削減になります。毎日続けると健康に効果を発揮することがわかると思います。
【必要なもの】
ー材料ー
- 乾燥米麹 100g
- 塩 お好み
- お水 110ml
ー使用する塩の量ー
自分が作りたい塩分濃度になるように塩を入れます。
16% :料理に入れると美味しい。
16~12% :キュウリなど野菜に付けて食べると美味しい。
12% :スタンダード
8% :塩分を控えたい方に!腐りやすいため温かい季節にはおすすめしません…
今回私はスタンダードの12%で作成しました!!
ー備品ー
- 塩麹を入れるためのしっかり蓋が閉まる容器
- 軽量カップ
【手順】
- 容器に米麹を全て入れる。
- 容器に塩も全て入れる。
- 米麹と塩がいい感じに混ざるように、容器を振る。
- お湯を注ぐ。
- 出来上がるまで蓋はあけない。
1週間ほど常温で日の当たらないところに置いてください。1日1回蓋は開けずに麹を動かすように軽く振ってあげることが重要になってきます。暖かい日は5日ほどで完成します!
出来上がった塩麹は冷凍すると2〜3ヶ月使用することができます。
今回の講義では塩麹の効果や、塩麹を使ったレシピも教えていただきました✨
★サーモンいくら
【必要なもの】
ー材料ー
- 鮭 1柵
- いくら 適量
- 塩麹 大さじ1☆
- みりん 大さじ1☆
- 醤油 大さじ1/2☆
ー備品ー
- ボール
【手順】
- サーモンをキューブ状に切る。
- ☆のついている材料をサーモンとあえる。
- 塩麹がまぶさったらいくらを加える。
少し寝かせると味がなじんでさらに美味しく食べることができます。生ものであるため、2日以内に食べてください!
★塩麹チキン
今回はスーパーの鶏むね肉を塩麹に20時間ほど漬けたものになります。ぱっと見で少しお肉の色も異なることに気づきます。今回は同じ条件でフライパンで蒸し焼きにしました。
左は何もしていない鶏胸肉、右が塩麹に2時間ほどつけた鶏胸肉になります。写真でもわかるように、塩麹につけた方が水分が含まれパサパサとしていないです。普通にいただくよりも、ジューシーで味わいもほんのりと塩麹の塩味が効いていて、これだけでお酒のおつまみになります。
3.新潟大学「日本酒学(sakeology)の挑戦」
新潟大学日本酒学センター 副センター長/経済科学部 准教授 岸保行様よりご講義いただきました。
日本酒学とは広範囲な学問を網羅する「対象限定・領域横断型」で、日本文化や伝統に根差した日本酒に対象を絞った世界初の学問領域です。
岸様は文系専門ということから、文系の視点での日本酒についてお話しいただきました。
- 日本酒学から考える地方創生
地方創生には「投資型」と「キラー・コンテンツ型」の2パターンがありますが、日本酒は「キラー・コンテンツ型」のアプローチが良いとおっしゃっておりました。キラー・コンテンツ型とは、興味の入り口は狭く、興味を持った後の出口は広くというアプローチです。はじめから日本酒を何か食べ物と掛け合わせて展開するのではなく、日本酒のポテンシャルをまずは知ってもらうことが重要であることを学びました。
- 日本酒の国際展開について
外国では日本酒を和食との組み合わせで、日本酒の需要が高まっています。そのため、清酒の生産量自体は減っているにもかかわらず、国外への輸出は増えています。しかし、国外の和食レストラン数には限りがあるため、日本酒が飽和していることが現状です。この飽和した日本酒を和食以外の料理とマリアージュさせ、売り出すことが必要になるとおっしゃっておりました。日本酒を世界酒となっているワインのように売り出すためには、市場の需要を知り、価格設定をすることも重要だと学びました。
- 日本酒の世界への挑戦
日本では日本酒を「酒税法による清酒の定義」や「地理的表示による日本酒の定義」を設けています。しかし海外では日本酒(清酒)は”Sake”と呼ばれています。清酒に果汁などを加えたリキュールも総じて”Sake”と表現されています。Sakeが世界酒となるためには、戦略性を持った日本酒の定義や世界観の創出が必要になることを学びました。
ただ、日本酒を広げていくのではなく、日本酒の定義もともに広げていく必要があることを知りました。定義をしっかりと国外の方に知ってもらうことで、日本酒の価値の向上や需要を高めることに繋がると考えました。
当講義では地域やその土地の日本酒の魅力をどのように発信していくか、また国外の方々に日本酒の価値を正しく知ってもらい広めていくかを学びました。麹の話や日本酒の作り方ばかりに目が向きがちですが、日本酒の経済的可能性をもっと考えていきたいと思いました。そのためには、何かとかけ合わせた日本酒の魅力を伝えていくのではなく、まずは日本酒の価値を知ってもらい、日本酒の潜在的魅力を引き出して行くことが鍵になると考えました。