皆様、こんにちは。2024 Miss SAKE Japan南侑里です。
2025年3月28日、仙台駅東口にある「ダテリウム」にて、【伝統的酒造り】のユネスコ無形文化遺産登録を記念したイベントが開催され、光栄にも私はオープニングセレモニーの司会と、第一部・第二部のトークショーに登壇させていただきました。
オープニングイベントでは、ナデシコプログラムでお世話になった仙台国税局 課税第二部 酒類監理官 武藤彰宣様と司会を務めさせていただきました。
オープニングイベント内で開催された鏡開きには、仙台国税局長の中村広樹様、出羽桜酒造株式会社 代表取締役社長 仲野益美様、南部杜氏協会副会長 熊谷利夫様、山内杜氏組合 組合長 石沢繁昌様、そして私2024 Miss SAKE Japan 南侑里が参加いたしました。
木槌の音が響いた瞬間、会場の皆さまの笑顔とともに、お祝いの空気が一気に広がりました。日本酒に込められた伝統の重みと未来への希望を、あらためて感じる時間となりました。
来場者の皆さまには、秋田県大仙市の「秀よし」の純米大吟醸・百田(ひゃくでん)、岩手県釜石市の「浜千鳥」の純米大吟醸・結の香(ゆいのか)、山形県天童市の「出羽桜」の純米大吟醸・雪女神(ゆきめがみ)の3種と、バラこうじの試食がセットで提供され、味わいと香りの違いを楽しみながら、それぞれの酒蔵の個性を感じていただく内容となっていました。そしてお子様やお酒の飲めない方も楽しめるよう、出羽桜酒造の甘酒やチョコと糀のブラウニーもございました。
さらに別会場の試飲ブースでは、東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)から集まった多彩な日本酒が勢ぞろいし、訪れた方々はその場で試飲を楽しみながら、地域ごとの味の違いや魅力に触れることができました。
またオープニングセレモニーには、なんと大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」も応援に駆けつけてくれ、会場には笑顔と活気が溢れました。
第一部トークショー「伝統的酒造りって何だろう?〜麹を使う酒造りの魅力〜」
第一部では、酒類鑑定官の武藤様を司会に、私から「伝統的酒造り」についてのご説明をさせていただいたのち、南部杜氏の熊谷利夫様と、山内杜氏の石沢繁昌様にお話を伺いました。
伝統的酒造りとは、特定の銘柄を指すのではなく、杜氏にや蔵人の皆様が長い年月をかけて受け継いできた“酒造りの技術”のことを指します。日本酒をはじめ、焼酎、泡盛、みりんなど、日本の暮らしや文化に深く根ざしたお酒づくり全体が対象です。今回の登録にあたって評価されたのは、「原料を整える」「麹を育てる」「発酵を管理する」という三つの工程が、いずれも手作業によって行われていることです。これらはすべて、人の感覚と経験に基づきながら丁寧に行われる、極めて繊細で高度な技術です。
特に麹づくりにおいては、温度や湿度の微細な変化を感じ取りながら、杜氏や蔵人の手で丹念に育てられます。こうした工程には、今も昔も変わることのない職人の技と想いがしっかりと息づいており、日本酒の“いのち”ともいえる部分を支えています。
お二人からは、麹の重要性や、麹造りにおける繊細な工程について深く学ばせていただきました。特に印象的だったのは、石沢様が披露してくださった「酒屋歌」。その美しい響きに、酒造りの現場に流れる時間の豊かさと、杜氏の心意気を感じました。古くから続く技術や所作とともに、こうした“歌”までもが継承されていることに、伝統の厚みと、日本の酒文化の奥深さを改めて感じました。
第二部トークショー:「酒造りの伝承〜これまでとこれから〜」
第二部では、出羽桜酒造株式会社の代表取締役社長・仲野益美様が司会を務めてくださいました。テーマは「伝統の継承と革新」。南部杜氏協会副会長の熊谷利夫様、山内杜氏組合 組合長の石沢繁昌様をお迎えし、それぞれの杜氏集団の深い歴史、修行時代の思い出、そして酒造りにおける継承と革新についてお話を伺いました。
お二人が語られた修行時代のお話から印象的だったのは、当時は今ほど言葉で教えられる時代ではなかったものの、厳しい中にも温かさがあり、先輩たちと“共に手を動かしながら”学んでいく現場だったということです。ただ厳しいだけではなく、自然と身についていくように導いてくださる先輩方の姿勢に、優しさや思いやりが感じられたといいます。
時代は変わり、現在ではしっかりと意見交換ができる環境の中で、「和」を大切に、蔵人同士が心を通わせながら酒造りに励んでおられるとのこと。酒造りの技術だけでなく、人と人とのつながりが受け継がれていることが、今の日本酒の温かみを生んでいるのだと強く感じました。
このように、多くの人の想いが丁寧に積み重ねられ、伝統が自然と次の世代へと手渡されてきたからこそ、今の日本酒文化が存在しているのだと、深い感動とともに実感する時間となりました。
「息」に込めた想い
今回、登壇者それぞれが「伝統的酒造り」をテーマに選んだ一文字を色紙に書き、発表しました。
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石沢繁昌様は「和」
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熊谷利夫様は「志」
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そして私は「息」を選びました。
伝統的酒造りには、人と自然の“息”が宿っている――そう感じたからです。酒蔵を訪れたときに感じた、麹が育つやわらかな音、発酵の香り、ひんやりとした仕込み水の感触。そこにはたしかに“生きた気配”がありました。何より心を打たれたのは、杜氏の皆様の静かで確かな“息遣い”です。言葉少なに、でも真剣に、そして丁寧に。その息のリズムに合わせるように、日本酒は少しずつ形になっていくのです。
酒造りは、人の手と自然の力が寄り添いながら成り立つもの。だからこそ、そのひとつひとつの工程に、人の“息”、自然の“息吹”が確かに重なり合っていると感じました。
「息」という文字には、私が日本酒と出会い、杜氏の方々と出会う中で感じた、手仕事の温もりと、そこに息づく命の営みへの敬意を込めました。
日本酒に宿る“やさしさ”
今回トークショーにて杜氏のお二人のお話を伺い、改めて感じたのは、やはり日本酒には“やさしさ”が宿っているということです。蔵人の皆さまのまっすぐであたたかいお人柄が、味わいとなって表れている――それは私自身、全国の酒蔵を巡る中で感じていたことでもあり、今回の対話でその理由に納得がいきました。
日本酒は、それぞれ異なる味わいを持ちながらも、その根底には共通して“真心”がある。伝統を大切にしながらも、未来に向けて開かれている。そんな日本酒の魅力を、これからもMiss SAKEとして皆さまにお伝えしていきたいと思っています。
今回の貴重な機会をいただきました主催関係者の皆様、登壇者の皆様、そして温かく迎えてくださった来場者の皆様に、心より御礼申し上げます。
2024 Miss SAKE Japan南侑里