皆さま、こんにちは。
2021 Miss SAKEの松崎未侑です。
先日、WSET SAKE Level 3 <Advanced Course>第7回講義を受講いたしました。
第7回は「特殊なスタイルの日本酒」がテーマでした。
WSET SAKE Level 3 <Advanced Course>の概要については、第1回目のブログ記事をご覧ください。
一つのアルコールジャンルでこんなにも多様性の豊かなものは、日本酒以外ないのではないかと思っています。
にごり酒、スパークリング酒、古酒、貴醸酒、樽酒、特別酒、超辛口について学びました。
以下、知っていそうで意外と知らない各日本酒の魅力や製法をご紹介します。
にごり酒
にごり酒は英語で「Cloudy sake」
日本酒の濁りを天気に例えて、曇りがかっている見た目として名付けられました。情緒がありますね。
よくにごり酒を訳す際に「Unfiltered sake」という表現も見かけますが、厳密にいうと法律上日本酒は濾過(filter)をしなければいけないため、unfilterではありません。
にごり酒は大きく分けて2種類:
①目の粗いザルで濾過をする場合。
②濾過した後に、粕を追加する場合。
また、にごり酒は特有のフレッシュさや微生物の活動を活かして、生酒やスパークリング日本酒、活性にごり酒として商品化されることが多いのも特徴です。
スパークリング日本酒や活性にごり酒が上記で出てきましたが、こちらは1990年代から始まった比較的新しいスタイルです。にごり酒はもろみに含まれる旨みのある日本酒になることが多いことから、海外の方にも好まれる印象が強いです。
スパークリング日本酒
スパーリング日本酒は大きく分けて3種類:
①CO2を注入したもの:「Carbonated Sparkling Sake」
②瓶内発酵させたもの:「Bottle-fermented Sparkling Sake」
③活性にごり: 「Live Nigori」
①は発酵、濾過は通常の日本酒と同様に行い、瓶詰めの際にCO2を注入するので、無色透明のことが多いです。
一方で、②は醪造りの際にアルコール発酵を通常の18〜20%程度ではなく、5〜10%の段階で濾過をします。その際に、瓶の中で生きている微生物が瓶内の糖を分解することでアルコール発酵を行います。この手法はフランスで作られるシャンパーニュと類似した方法で、シャンパーニュボトルに入れられ、比較的に高価に販売されるのが特徴です。
③はシャンパーニュ方式のように、瓶内発酵をさせるのですが、濾過の際に目の粗いザルを用います。そのため、酵母の動きが大変活発で瓶内の環境変化が大きく、商品の管理が難しいことから短期間で蔵元や小さな小売店で本数限定で販売されることが多いです。
スパークリング日本酒の品質を一定レベル保つべく、awa酒協会が設立されました。
常温で3ヶ月以上、香味、品質が安定していること また火入れ殺菌を行う等の品質基準に加えて、以下の商品開発基準が定められております。
1.米*¹ 、米こうじ及び水のみを使用し、日本酒であること
2.国産米を100%使用し、かつ農産物検査法により3等以上に格付けされた米を原料とすること
3.醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有していること*²
4.外観は視覚的に透明であり、抜栓後容器に注いだ時に一筋泡を生じること
5.アルコール分は、10度以上であること
6.ガス圧は20℃で3.5バール*² (0.35メガパスカル)以上であること
※1 純米であることや精米歩合については規定しない
※2 二次発酵については瓶内でもタンク内でも規定内とする
お祝い事や、日本酒のプレゼントで華を添えたい時などは、awa酒協会認定の商品を選ぶのも安心かつ確実な方法ですね。
古酒
古酒は、別名「熟成酒」とも呼ばれます。
飴色玉ねぎを作るのと同様の現象:アミノ酸と糖分の化学変化(メイラード反応)によって、熟成が進むことで、旨味が強調されてコクと深みがでます。ナッツ、カラメル、大豆、漬物などの味わいがあるものもあります。
熟成の年数や、温度、保存容器のサイズや材質などの環境によって完成品の特徴が全く異なるため、さまざまな色(琥珀色や茶色など)や味わいを楽しむことができます。蔵元ごとに多様性が豊かなのも特徴ですが、一般的には3年以上から熟成酒と呼ばれるようになります。また、ブレンドの古酒は最も若い日本酒の年数で示すのが基本です。
古酒のブランド化を目指して、我々Miss SAKEの顧問でもいらっしゃる増田徳兵衛商店の増田徳兵衛社長が設立メンバーである一般社団法人「刻(とき)SAKE協会」があります。
ヴィジョンは、熟成イノベーションにより、新たな日本酒文化を構築すること。
具体的には「日本酒の価値創造」「熟成文化の振興」「熟成酒の付加価値化」を目的としています。
2022 年 4月から新たに【特別ブレンド樽後熟「刻の奏」】が発売されます。山崎蒸溜所のウイスキー樽で熟成させたアッサンブラージュ(ブレンド)の日本酒シリーズです。世界限定120本のプレミアムセット!
やはりウィスキーラバーにも是非、古酒の魅力に出会っていただきたいです!
他にも、全国の古酒を取り揃える古酒ブランド「古昔の美酒」や、名古屋の古酒専門の日本酒バー「エルバージュ」など、古酒マニアの世界が大きく広がり注目が集まっています。
貴醸酒
日本酒で造った日本酒が貴醸酒。
お米(100):日本酒(70):水(60)
1973年に初めて醸されて以来、濃醇にして、甘美な口当たりが古くから人々を魅了しています。
フォアグラと合わせるなら貴腐ワインという鉄板ペアリングが存在しますが、貴腐ワインの代わりに貴醸酒を合わせるのも通の楽しみ方。
フォアグラ調理の際に、ソースの隠し味で貴醸酒を少し加えることでよりペアリングを引き立ててくれます。濃厚x濃厚のペアリングで、特別なお食事をお楽しみください。
樽酒
樽の中で日本酒を1〜2週間程度(またはそれ以上)保存するというもの。
香ばしく、青い、木の香りが日本酒に加わり日本酒に新たな次元が追加されるようなイメージでしょうか。
1600年代から1990年代頃に船で日本酒が輸送される際に樽に入れて運ばれたことが由来。
後味に樽のいい香りが残るのがクセになる日本酒です。
一般的には杉が多いですが、最近北海道では「ミズナラ」という珍しい木を用いたりと、木によっても地域性を楽しめるのが個性豊かな樽酒です。
枡でいただく日本酒も樽酒のような味わいをお手軽に楽しめますね!
特別酒
ラベルによく見るのが「特別」の表示。
精米歩合が60%であること、酒米のみで醸されたもの、酵母やお米のこだわりなど、酒蔵ごとのこだわりが出る商品です。
超辛口
辛口は英語に訳すとdry。甘さが控えめなお酒ということですが、超辛口は通常は日本酒度+4程度のところ、超辛口は、+9から+66のものを示します。酸度も高いことが多いです。
「鬼ころし」は辛口日本酒の定番として多くの蔵元が出していることから、地域性や酒蔵ごとの特色が見えやすく、色々飲み比べてみるのも面白いですね!
いかがでしたでしょうか?
ワインやビール、ウィスキーなど、世界には多種多様なお酒がありますが、日本酒は「日本酒」という一括りでも個性豊かで、その多様性は世界のどのお酒にも負けないものだと感じました。
世の中に出ている日本酒は、全て蔵元様が細かい設計をした後に追及された繊細な技術の結晶です。
お祝いにはスパークリング、スパイシーなお料理にはマイルドなにごり酒、ゆっくりしたい時間やデザートには古酒や貴醸酒など、場面に合わせて異なるタイプの日本酒を手に取ってみてはいかがですか?
未知との遭遇をした際の感動や喜びの瞬間は人の記憶によく残るものだと思います。是非特徴的な日本酒を通して、より濃厚な人生の思い出を作ってみてください。
2021 Miss SAKE
松崎未侑