【講義概要】
場所:グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社 代官山セミナールーム
講師:
GetBackerS株式会社 代表取締役社長 布留川勝様
グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社 代表取締役社長 福田聡子様
【活動内容】
この日は、GetBackerS株式会社 代表取締役社長 布留川勝様から「パーソナル・グローバリゼーション」についてのご講義を、そしてグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社 代表取締役社長 福田聡子様から「右脳型英語学習法」についてのご講義を受講させていただきました。
【学んだことは3つ!グローバル人材になるために必要な素質とは?】
布留川勝様は、「グローバル人材育成を通して日本に貢献すること」を目的として、2000年にグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社を創業されました。
その後約20年に渡り、名だたるグローバル企業の人材育成のコンサルティングに携わり、2020年に代表取締役を退任され、同年9月に「リスペクトされる日本を取り戻す、失ってしまった本当の自分を取り戻す、多様性に富んだ人脈(backers) をgetする」という理念をもとにGetBackerS株式会社を創立。また同時期に「創造的でサスティナブルな人生を生きる」をテーマに 「LifeDesign Institute(powered by ThinkG)」を創立されました。
福田聡子様は、co-founderとして布留川様とともに事業を進めながら、2020年にグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社の代表取締役社長として就任されました。
そんなグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社では、現在私が勤める会社で過去に経営層向けのセミナーを開催されたこともあるのだとか。
企業の経営層が受講するようなセミナーに参加できるなんて、本当に貴重な経験をさせていただきました。
そんなおふたりのご講義では学ぶことが多く、あっという間の7時間!全てを書ききれないのが残念ではありますが、特に印象的だった3つの学びについて、私の過去の体験談も交えながらまとめさせていただきます。
★【1】ファッションではなく、パッションを持つ!
布留川勝様のご講義は、世界が「VUCAワールド」になってきているというお話に始まりました。
「VUCA」とは変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の頭文字を取って付けられた言葉で、企業経営や個人キャリアを取り巻く目まぐるしい環境のことを示すキーワードです。
まさに、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う生活様式の変化で、ますます予測不可能な世の中になってきていることを肌で感じる今日を象徴するような言葉ですね。
そんな時代を生き抜くためには、自らがグローバル人材になっていく必要があると布留川様はおっしゃいます。
グローバル人材を構成する要素のうち、最初にくるのが「ビジョナリーであること」。そして、ビジョナリーな人材が持つ素質のひとつに、「CQ」と「PQ」が高いことが挙げられると教わりました。
「CQ」「PQ」と聞いても、あまりピンとこない方が多いかと思います。私たちが普段よく使う「IQ:知能指数」や「EQ:感情指数」から派生した造語で、それぞれ「好奇心指数」「情熱指数」を指します。
情熱指数と聞いて、私は過去の苦い思い出を想起しました。
クラシックバレエに打ち込み、将来はバレエダンサーとして舞台に立ちたいと思っていた中学1年生のころ、当時師事していた先生のアドバイスで、ロシアのバレエ学校の講師の方によるレッスンを受講したときのことです。
バレエの世界では、名門バレエ学校の講師によるレッスンが各国で不定期に開催されることがあります。
当時私がレッスンを受講した講師の方は、その直前に韓国でジュニアダンサーに向けてレッスンをされていました。
その方がレッスン中に突然音楽を止めて、私たちに一言。
「情熱が伝わらない。韓国のダンサーたちにはPassionがあったけれど、あなたたち日本人のバレエはまるでFashionね。」
ショックのあまり、声が出ず一歩も動けなかった記憶が鮮明にあります。
プロになりたいと思っていた当時の私は、もちろんカタチ(Fashion)だけのつもりはなく、本気でバレエと向き合っているつもりでした。
しかし、見る人が見ると「心から湧き出る情熱(Passion)」に突き動かされるような姿勢では到底なかったのだと思います。
日本人は、言われた通りのことを真面目にこなすことは得意ですが、「溢れ出る情熱」を乗せて表現するのはどうしても苦手。
世界中のダンサーを見ている方から見ると、日本人としてのこの特性が特に顕著だったのでしょう。
人は【本気な人】に心を動かされます。
1人では成し遂げられないようなことでも、協力してくれる人が多ければ多いほど達成率は上がるでしょう。情熱を伝えられるということは、周りを巻き込むという意味でも非常に肝心な素質です。
バレエを通じて経験したショッキングな(でも学びの多い)出来事を振り返って、情熱は人に伝わるものであると思う一方で、情熱を伝えることですら自らの努力が必要だと私は思っています。
「相手の感度が低くて、私の情熱が伝わらなかった」ではなく、「相手にきちんと伝えるために、私は何をすべきだろう」と考えて実践する、自責のスタンスと努力です。
翻って、Miss SAKEファイナリストとしての今の私はどうだろうか?日本酒を通じて日本文化を発信したい、その情熱は多くの人に届くものだろうか?この問いを自分に投げかけながら、日本文化を全国、そして世界に伝えるためにできることを考えて取り組んで行きたいと思います。
★【2】協同のための衝突を恐れない、でも敬意を持って
布留川様のご講義では、グローバル人材に求められる素質として「セルフエンパワーできること」も挙げられていました。自らを律してモチベーションを下げない力、という風に私は解釈しています。
そうあるために取るべき具体的な行動のひとつに「アサーティブであること」がある、と布留川様は教えてくださいました。
アサーティブという単語にしっくりくる日本語を探すのは難しいですが、攻撃的でなく、かつ慎まやかすぎるでもなく、相手とのwin-winな関係性の構築に向けて「相手に敬意を持ちながらも、言うべきことを言える人」の姿勢だと、私は理解しています。
「アサーティブであること」と聞いて、私は前職で出会ったある方とのエピソードを思い出しました。
新卒で入社した会社は、日本ロレアルというフランスの化粧品メーカーでした。私が働いていたのは日本のローカルオフィスでしたが、社員の国籍も多様で、海外とのやり取りも多く、企業風土にはフランス文化が強く根付いていました。
ある時、ロレアルを長く知る日本人の女性役員が、日本人だけの会議中にスモールトークとして「ロレアルらしさ」を表すキーワードを教えてくれました。それは、会議で顕著な「ある姿勢」についてでした。
「ロレアルの人ってね、ベースに”Confrontation is a new collaboration”という精神を持っていると思うの。これが日本人にとっては難しい文化でもあるわね。」
Confrontationは、直訳すると「対立」や「衝突」のことです。
”Confrontation is a new collaboration”とは、「衝突は、新しい協同の在り方だ」という意味になります。
「え?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。その時の私は「少なくとも古くからの日本的な文化からは生まれない姿勢だよな」と思いつつ「確かに、ロレアルではit works(それで上手くいっている)だな」と、妙に納得したのを覚えています。
自分と相手のあいだに一線があるとすると、ロレアルでは、いきなりその一線を超えて意見や質問を投げかけられるような場面が頻繁にありました。いわゆる”日本的な”文脈では、あまり超えようとする人がいない一線です。
一見、攻撃的にも見えるこの行動の根底には、「いずれ衝突する意見はあえて最初から投げ入れて、互いの意見を聞いたうえで冷静にすり合わせを進行させることに意味がある」という考え方があると思います。
最初の頃は「ウッ」と衝撃を受けることもままありましたが、着地点を探るためのアプローチ方法だと理解すると、じりじりとお互いの妥協点を探る日本のやり方よりも、彼らにとっては合理的で馴染み深い手法なのだと納得し、次第に自分にも馴染むようになりました。
脱線が長くなってしまいましたが、言いたかったことはふたつ、①ロレアルような「対立を恐れない姿勢」の前提にはアサーティブネスが必須であること、そして②意見の対立を是とする文化もあるということを念頭に置いておく必要があるということです。
「対立を恐れない姿勢」と言えど、攻撃性が高ければよい訳では決してありません。
建設的に議論を進めるためには、互いに対する敬意やアサーティブな姿勢が大前提として必要です。
そして、これから私たちがMiss SAKEとしてグローバルな議論の場に参加したり、世界に向けて発信したりといった機会がある場合は、相手の文化圏によっては意見を対立させることを良しとすることもあるということを念頭に置いておかねばなりません。
もちろん接する方の文化圏によって最適な関わり方は違うと思うので、アサーティブネスを大前提としながらも、ロレアルで学んだ「協同するための対立を恐れない」精神を、関わる相手に合わせてうまく発揮できるような人間になりたいと思います。
★【3】沈黙は無知に等しい?!素早く反応することを忘れない!
午後には、現在のグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社 代表取締役社長 福田聡子様から、「右脳型英語学習法」というタイトルで、英語を身につけ使える人材になるための心構えから実践までを学びました。
福田様のご講義では、受講ルールのひとつに「Give Feedbacks(0.5秒以内に反応を返そう)」ということが掲げられていました。
これは、特に西洋文化を持つ人と話すときに必須になる姿勢だといいます。
福田様はご講義中も終始「皆さんが主体的に手を上げるまで当てません!」「0.5秒以内の反応、ありがとう!」という言葉を投げかけて、私たちの主体性を引き出そうとしてくださいました。
特に欧米の文化で重んじられるという「主体的に反応を返す」姿勢について考えたとき、私が17歳の時に通っていたドイツの片田舎の公立高校での授業風景が頭に浮かびました。
若くて怖いもの知らずだった高校生の私は、ほとんど(というか全く)ドイツ語を身につけないままに、単身でドイツ、それもアジア人が一人もいないような田舎町に渡りました。
ごく一般的な公立高校に通っていたので、もちろん授業もすべてドイツ語。最初のうちは、唯一理解できて発言もできる英語の授業だけが楽しみでした。
そんな英語の授業で、日本の学校での授業風景をクラスメイトに紹介する機会をいただきました。写真を見せながら、いわゆる日本の学校教育の様子を紹介すると、クラスメイトからこんな声が上がりました。
「どうしてみんな、こんなに静かなの?」
同じ学年の生徒たちからのそんな疑問を受けて、担任の先生が以下のようにまとめてくれた時のことを鮮明に覚えています。
「ドイツと日本では生徒に求められる姿勢が違うわね。こっちだと、”Silent equals stupid(沈黙は無知に等しい)“と考える文化があるから、授業中は常に手を上げて自ら発言することを求められる。」
ドイツは世界的に見てもローコンテクストな文化です。考えていることが10あれば、言葉を尽くして10説明しないと相手には伝わらないというのです。
一方、日本は世界的に見てかなりハイコンテクストの文化。授業風景ひとつとっても、ドイツと日本は両極にあることを学びました。
日本人の思慮深さと相手の気持ちを汲み取ろうとする文化は素晴らしい性質ですが、ドイツのような文化圏では、意見があっても発言しないという文化を理解されず「何も考えていない人」と判断されてしまうこともしばしば。
グローバルに活躍する人間になるなら、両者の違いを念頭に置いて、福田様のご講義におけるルールのように素早く反応して意見を述べるという姿勢を見せることも重要です。
考えていることがあるのに伝わらないのは損!これからMiss SAKEの活動でも、国籍に関わらず様々な文化的背景を持つ方とやり取りさせていただく機会があるはずです。福田様のご講義を通じて、話す相手に合わせて最適な方法で自分の意見を伝えられる人間になりたいと改めて思いました。
本日の学びを自分の経験も踏まえてまとめると、以下の3つになります。
- Not FASHION but PASSION:カタチにこだわらず、情熱を持ってやる
- Confrontation is a new collaboration:協同するための対立を恐れない
- Silent equals stupid:沈黙は無知に等しい、自分の意見を伝える
私の短い人生経験を振り返っても、グローバルな視点を持った多種多様な人との関係性の中から学ぶことは多々あったと改めて思いました。これからのMiss SAKEの活動の中でも、幅広く学んだことを活かしながら、関わる相手にとって心地よいコミュニケーションが取れる人間になりたいと思っております。
布留川様、福田様、この度は貴重なお時間をありがとうございました!