Miss SAKE News/Blog

2021 Miss SAKE 京都 中野由美子 / 第7回ナデシコプログラムレポート

【プログラム概要】
  • 日時:2021年4月18日
  • 講師:
    • 一般社団法人ミス日本酒 代表理事 愛葉宣明様
    • 合同会社 セレンディピティ 代表 黒田正雄様
    • 未生流笹岡家元 笹岡隆甫様

【活動内容】

この日は、ミス日本酒代表理事でいらっしゃる愛葉様からのご講義にはじまり、午後は合同会社セレンディピティ代表の黒田様から「サブカルチャー クラシック音楽編」、そして最後に未生流お家元の笹岡様より「いけばな~2021年それ以降に向けて~」のお話を賜りました。

【学んだこと】

きっかけづくりがしたい!!!

愛葉代表が、一体どんなことを考えてMiss SAKEを発足されたのかをお聞きしてみたいと思っていたので、私はこの日をずっと楽しみにしておりました。

その答えに近づくヒントは、愛葉様が頻繁に仰っていた「きっかけ」というキーワードにありました。

■Miss SAKEがやりたいのは、きっかけづくり?

ご講義の中で愛葉様は、「みんなそれぞれにストーリーがあって、始めるきっかけは何でもいい。大事なのは、そのあと何を学び・考え・行動に移すかだ」という趣旨のことを頻繁に仰っていました。

愛葉様ご自身、団体を発足されて今に至るまでに多様なジャンルの方々との出会いがあり、きっかけが繋がった結果、今のMiss SAKEができあがったというのです。

そんな、人との出会いやご縁を大事にされている愛葉様は、「人にフォーカスを当てて、人を輩出する機会づくりをしたい」と思われ、一般社団法人ミス日本酒を発足されました。

■「ありがとう、中野さんが担当でよかった」の一言に目を覚ました二十代前半

愛葉様の言葉は、私の胸にストンと落ちました。

それは、私が人間とは(少なくとも私は)1人では生きていけない生きものだと思っているからです。そのため、私の人生における最重要事項は、いかに周囲の人を大切にできるかということに尽きます。

少し、自分の話をさせていただきます。

私は誕生日が早く発育がよかったこともあり、幼少期からどちらかというと体力も発言力もあるタイプで、今思うとただの早咲きで本当にイヤな奴だったと思います。(足が早ければ学級委員になれた小学時代です。)

3歳から始めたクラシックバレエを、高校卒業まで部活に所属せずひたすらに続けた私は、みんなが部活動に打ち込むようになると、自分だけ5限終わりに急いで稽古に行くので、学校ではある種の疎外感を(勝手に)感じている時期がありました。その寂しさを打ち消すために「みんなとは違う」ことを自分自身の価値だと思って、常に誰かと自分を比べる青春期を過ごしていたのです。

しかし、社会人になってから「誰かと比べること」には本当はさほど価値がないということを思い知らされる経験をすることになります。

それは、新卒で就職した化粧品会社で、1年間ほど営業職として東北・関東・北陸の担当サロンへ、講習会や商談で赴くようになってからのことです。

サロンの営業時間はだいたい20~21時頃まで。事務所を構えているような大手サロンでなければ、オーナーと商談ができるのは片付けが終わった21~22時ごろからです。
中には「一杯飲みながらやろうか!」となる取引先の方もいらっしゃいます。そうして飲みながら話していると私自身も本音が出てしまうことが多々あり、時には40歳以上年上のオーナーさんに人生相談をする始末。

そんな”飲んべえ営業”時代、1年間ほど毎月通いつづけた甲府のオーナー先生と、いつも通り「おにぎりが美味しい地元の居酒屋さん」で、名ばかりの商談をしていたときのことです。

ほろ酔いになった先生が、ふいに「ありがとう、中野さんが担当でよかった。」と言ってくださったのです。私は何も特別なことはしていません。まして社会人1年目で、業界のことも社会のこともよく知らない若輩者で、ただ毎月サロンに通って担当商品や業界のことについて議論をしているふうに装いながら、楽しくおにぎりとお酒をいただいていただけです。

しかしそのオーナー先生は、「ケラスターゼの中野さん」でも「ロレアルの中野さん」でもなく、毎月飲みながら話をする「中野さん」として、私にありがとうと言葉をかけてくださったのです。

その言葉がどんな受注よりも嬉しく、それがきっかけとなり、はたと気づきました。私は、誰かに「あなたが居てくれてよかった」と思ってもらえるような人間になりたいのだと。

成果を出すことももちろん重要ですが、誰かに勝ることを目的にするのではなく、成果を出すことで誰かの役に立つ・貢献することを目的にすべきなのだと気づかせていただいたのです。

オーナー先生の言葉のおかげで、「私が居ることで少しでもその瞬間がいいなと思ってもらえるなら、それが一番幸せなことなんだな〜」と思えるようになりました。それからというもの、人と関わるのが、ひいては生きること自体がとても楽しくなり、自分にとっては人生のターニングポイントだったと振り返っています。

▲日本ロレアル時代。

美容室向けの商材を営業していた社会人1年目は、とにかく美容室での体験をすべて自分でも経験したく、ヘアカラー材で「色相環を一周する」べく毎月髪色を変えていました。写真は赤とピンクの間の時です。

▲入社1ヶ月目のメイクボックスの中身です。

とにかく自社他社関係なく、いろんなテクスチャーやカラー、美容部員さんの接客などを体験したく、様々なメーカーブランドのメイク用品を買い漁り、入社1ヶ月目でカード地獄を経験しました。

▲たくさんあるカラーを1つずつ試すには時間が足りなかったので、最終的に毎日レインボーメイクのような状態でした。

▲いろいろやった結果、

日本ロレアル在籍期間のラスト1年間は海外で一部流行っていたBussCut(6mm刈り)で過ごし、とにかく美容業界で考えられるあらゆるスタイルを試してみた3年間でした。

日本酒を武器にきっかけづくりをしてみたい

脱線が長くなってしまいましたが、言いたかったことは、私は人との出会いを大切にしたい、そして出会った人たちに「中野が居てよかった」と言ってもらえるような貢献をしたい、という気持ちで生きているということです。

この気持ちは、愛葉様が大切にされているご縁や出会い、そしてきっかけづくりに対する想いとリンクするところがあり、Miss SAKEの活動をさせていただけていることを嬉しく思う限りです。

さて、ではMiss SAKEとして、出会った人にどんな貢献ができるのか?Miss SAKEをきっかけに何を提供できるのか?それを考えるうえで、日本酒はとっても強い武器だと思っています。

日本酒には造り手様と、それを楽しむお客様がいらっしゃいます。それも、私の生まれ故郷である京都には沢山の酒蔵様があります。お恥ずかしながら、地元の酒蔵様に足を運んだこともなければ、これまで意識して京都のお酒を飲んでくるといった経験もありません。

それでも、ナデシコプログラムを受けるようになってから、意識は明らかに変わりました。
あまから手帖やdancyuといった雑誌で紹介されている、日本酒と合うお料理を自宅で試してみたり、麹本を買って米から麹づくりをやってみたり。

少しずつ、日本酒のお勉強を経て日本文化や地元京都の魅力を伝えられる人間になれるよう、これからも実践を進めてまいりたい所存です。

その先に、「中野ちゃんに聞いたポテサラと日本酒のペアリングやってみて良かったよ!」とか、「日本酒を使ったレシピを試してみたよ!」とか、「酒蔵に興味持って京都に行ってみたよ!」という人が少しでも生まれてくれて、結果、選んでくださったミス日本酒や京都の酒蔵さんにとって「中野を選んでよかった」と思ってもらえる存在になれたら、私にとってはこれ以上の幸せはありません。

愛葉代表、貴重なお話をありがとうございました。

黒田 正雄様】サブカルチャーって何?サブを活性化させることで、本道をも盛り上げる

合同会社セレンディピティ代表の黒田様は、元々オペラ歌手として10年間舞台に立たれていた声楽家でいらっしゃいます。

東日本大震災で舞台公演がなくなったことをきっかけに、人生を考え直すことになったという黒田様。他業種を経験されつつもイベントを開催したいと思い、通過点として3年後に会社を設立されました。

会社名でもある「セレンディピティ」とは、偶発的必然性、縁で引き合わされることなどを指す英語だそうです。事業内容として、イベントの企画・運営、楽曲制作・音源制作、アーティスト派遣・マネージメントをしていらっしゃいます。

そんな黒田様から、「サブカルチャー」としてのクラシック音楽についてのお話を賜りました。

■サブカルチャーって何?

王族や貴族がステータスとして作曲家を雇い「われらの文化、高尚なり!」と言って上流階級のみが興じていたものが、カルチャーの発端だそうです。
当時は、市民は楽しむことができなかった高尚な存在で、そこから19世紀以降に貴族が楽しむメインカルチャーと、市民が楽しむサブカルチャーに分かれました。

20世紀以降、民衆のあいだでサブカルチャーが広がっていってからは、今では誰もが楽しむ映画やテレビ、ポピュラー音楽、テレビゲームなど、科学技術の発達と共にそのジャンルも幅広くなりました。1960年代には、高貴なハイカルチャー、大勢が楽しむメインカルチャー、そして新しいサブカルチャーという分類に細分化されました。

ざっくりと、以下のような分類です。

  • ハイカルチャー:王族や貴族が楽しむ文化
    古典文学、美術、演劇、クラシック音楽など
  • メインカルチャー:流行りを追う大勢の民衆が楽しむ文化
    ポップミュージック、映画、テレビなど
  • サブカルチャー:少数派だけど好きなものに誇りを持つ人々の文化
    漫画、ゲーム、特撮、コスプレなど
    +αカウンターカルチャー:反骨精神を持つ人たちによる文化(サブカルの一部)

上記の中でも、サブカルチャーのジャンルはどんどん拡充し、一部の担い手ではなく、広く楽しまれ、派生していくようになったといいます。

■サブカル音楽事業始動、サブを活性化することで本道を盛り上げたいという想い

2018年、黒田様は日本初のプロフェッショナルが募るサブカル専門コーラス隊「Barzz~鶏の吟遊詩人たち~」を発足されました。
今では、数々のアニメゲームのタイトル、そしてドラマや大河ドラマの曲を歌うコーラス隊です。

また、生で聞きたいという声に応えて、オケコン(オーケストラコンサート:ゲームの曲をクラシック音楽で演奏すること)も開催され大きな反響を生みました。
しかし2020年、コーラスを入れると飛沫が飛ぶというので、オペラ歌手は仕事が激減。

サブカル音楽事業は、サブでお金を生み出して歌手が生きてるようにすることで、本道であるオペラも元気になっていってほしいとの想いで始められた事業です。コロナによる影響は、想像を絶する辛さであろうと思いました。

それでも、少しずつお客さんの意識を変えていって、お客さんが価値を分かるようにすることで、業界全体を盛り上げたいと語る黒田様。

これは、日本酒をとりまく環境にも言えることではないかと思います。

日本酒は飲料用だけでも種類が相当豊富ですが、その用途は飲料だけではなく料理にも渡ります。
また、日本酒の製造過程では、米の栽培にはじまり、日本酒以外にも使われる麹菌、そして酒粕など様々な原料や副産物があります。

日本酒を盛り上げることができれば、結果的に日本の農業、そして日本の食を豊かにすることができるのでは?と黒田様のお話を聞きながら妄想が広がりました。

Miss SAKEの公式YouTube、Miss SAKE Channelのエンディングタイトルの作曲・制作をしてくださった黒田様は、その楽曲の「イメージをつくるのは皆さんファイナリストなんですよ」とおっしゃっていました。

新しい楽曲という0から1を生み出せる方の才能や努力は、私たちには想像もつかないモノです。その楽曲に、日本らしく雅なイメージを付与する役割が担える人間になれるよう、動画撮影や日頃の生活から意識を高めていきたいです。

黒田様、貴重なお話をありがとうございました!

【笹岡 隆甫様】いけばなに見る、日本人の美に対するこころ

未生流のお家元でいらっしゃる笹岡様は、いけばなの先生方を指導する、学校で言う校長先生のような立場でいらっしゃいます。

そんな笹岡様のご講義の中で特に印象的だったのは、「いけばなを通じて教わったのは、花との向き合い方」だという言葉に始まる、人生の哲学についてのお話でした。

■自然と共存する日本人のこころ

お家元は、活けた花を毎回半紙に包んで日本酒をかけて清めてから捨てるのだそう。毎日花を活けるお仕事で、それはきっと大変な作業だと思います。

それでも、美しい姿を見せてくれた花や自然に対する感謝の気持ちを持つことが大事だと、いけばなを通じて笹岡様は学んだと仰っていました。

思えば、日本には昔から(というよりは昔ほど、が正しいかもしれません)自然と共に生きていくという意識・文化があります。

例えば、西洋のフラワーアレンジメントと異なり、いけばなは「花」を「生」かすと書くこともあるように、単なるアートではなく命を扱う仕事だと笹岡様はおっしゃいます。

また、建築も装飾を尽くすというよりは、風通りがよく採光を意識した造りで、そのシンプルな様式の中に、床の間という「季節を感じるための装置」が控えめに用意されています。

余談ですが、日本を代表する生活雑誌『暮しの手帖』の長寿連載「すてきなあなたに」のよりぬき集で、「太陽と色」という回があります。

それは、編者の大橋鎮子氏が、あるインキ会社の人と色についての話をしているとき「外国のものは色が冴えていて透明感があるのに、日本のは何か違う」と言ったところ、「日本のインキの品質は世界一だけど、採光を大事にする建築で全てのものに陽が当たるから、とにかく焼けないようにするため配合が変わるのだ」ということをインキ会社の人に教わったといいます。

ここからも、日本人が自然(太陽の光)を生活スペースに取り入れて、いっしょに生きていくことを選んだことが伺えます。

■日本人ならではの、「美」の感覚

私は、自然と共存する日本人のこころが大好きです。もっと言うと、「共存」は私が生きる上で非常に大事にしている考え方でもあります。

笹岡様の「いけばなを通じて、花や自然との向き合い方を学んだ」という言葉を聞いてから(もちろんご講義では他にも貴重なお話が沢山あってレポートには書ききれないほどなのですが)、最後に絶対に聞いてみたいと思っていた質問がありましたので、そのことについて書かせていただきます。

それは、お家元にとって「美しさ」とは何か?という質問です。

日本人はお花が好き、自然が好きな民族です。これは、四季折々の美しさを愛でる感性が心に宿っていることを示しているのではないかと思います。その美しさの象徴のような「花」を使って表現をされている笹岡様にとって、美しさとはどんなものなのか聞いてみたいと思ったのです。

笹岡様は、美とは心の支えだと答えてくださいました。

平和な時代を過ごしていると、お花は元気をくれるものだという意識が薄れるけれど、有事のときこそお花は心の支えになる。美しさとは、いざという時に自分の心の支えになってくれる存在だと教えてくださいました。

いけばなでは、花のつぼみを残すことが多いそうです。

つぼみがほころんで満開になり、そして散っていく一連の様子を見守って、命を見届ける思想が裏側に感ぜられます。

花が咲くのを見て、時間が流れること・年を重ねることは素敵だと学ぶことも出来ますし、太陽に向かって咲く姿を見て、逆境にあっても前を向こうと勇気を貰えます。

笹岡様が仰っていた「花を師匠として向き合う」とは、花の生き様を見て人間としての生き方を考えるということなのではないかと思います。

この考え方は、私が日ごろから大切にしている「共存」の価値観に通ずるところがあります。自分が日本人としての美の感覚を持てているかもしれないと嬉しくなりました。

僭越ながら、自分にとっての美の基準についても書かせていただきます。

私にとって「美しさ」とは、異なる種の生きものが共存し合っている状態のことを指すと思っています。これは、今私が仕事で携わっている「犬」×「人間」という文脈にも当てはまりますし、「植物」×「人間」という意味でいけばなにも当てはまります。

しかし、それは単純に「動物愛護の目的でビーガンになりましょう」だとか「自然破壊はやめてエコに生きましょう」ということではありません。

イメージは、ディズニーによる映画『ライオンキング』の世界の実現です。映画ライオンキングの最後のシーンでは、生きもの同士の本来の生態系や命の循環の様子が描かれています。食べられるものと食べるものが居て、でもお互いに対立し合うことなく自然と秩序を保って共存している状態。私は、この共存の様を美しい状態だと感じます。

ご講義の最後に笹岡様は、「文化の担い手として発信していきたいことは、対することではなく一緒にやっていくという感覚と仰っていました。

日本人はおもてなしが好きですが、これは向き合う相手に対する敬意を払う文化があると言い換えられるのではないでしょうか?もっと言うと、人間同士だけではなく、人間も自然の一部だという意識で、自然に対しても敬意を持つ文化であると思います。

花の声にならない声を聞いて表現し、最後まで命の経過を見守るという花と人間の在り方からは、本当に学ぶことが沢山ありました。

笹岡様、貴重なお話をありがとうございました。

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