「あなたは「東北放送」の看板を背負ってる。つまり、あなたの発言や行動は全て「東北放送」の発言になるんだよ。」
新人の頃、諸先輩方から耳にタコができるほど聞かされた言葉です。
7回目となるナデシコプログラム。
午前の講義はMiss SAKEとして活動する上での注意事項や心構えを、一般社団法人ミス日本酒 愛葉宣明代表理事から伺いました。
中でも、クライアントさまから個人的にお仕事を受けてはならないことや、SNS等を含め発言に気をつけること、など。
多くの部分で、私がアナウンサーとしてこれまで培ってきた倫理観と非常にマッチするものがありました。
突然ですが、みなさまに質問です。
テレビなどでよく聞く「放送禁止用語」というフレーズですが実は、放送禁止用語と定義付けられている言葉は一つしかないことをご存知でしょうか?
(その言葉はここでは伏せますが…)
その言葉を聴くだけで、その方の病状が悪化したり苦しむ方がいらしゃるので、唯一の放送禁止用語に指定されました。
といっても、放送禁止用語でなければなんでも言っていいというわけではありませんよね。
放送は、誰がいつ耳にしてしまうかわからない”受け身のメディア”なので、避けたくても避けられません。
誰かを傷つけたり、損させてしまう様な言動。
誤解を生む表現や間違った情報など、放送に携わる者は誰よりも言葉に敏感に、繊細に向き合わなければなりません。
「でも、人間なんだもの。うっかり、つい、発言してしまうことってあるじゃないか。」
・・・そんな声が聞こえた気がします。笑
ですが、放送の世界では「うっかり」は許されません。
一度でも人間性を疑われる様な発言をしてしまったら、それは刺青の様に一生消えないその人、そしてその局のイメージになります。
言葉というのは、それだけの責任を持って扱わなければならないものなのです。
これはアナウンサーに限ったことではなく、社会に関わる者であれば誰しもが持って置いた方がいい倫理観だと私は思います。
我々はもう大人で、全てが自己責任ではありますが人は常に背負うもの、関わる人がいます。
その責任を忘れてはならないなと、愛葉代表のお話を聞き、再度胸に刻みました。
講義ではMiss SAKEとしてのあるべき姿の他に、愛葉代表の人生観も伺いました。
「時間」「人」「縁」を大切にする愛葉代表の軸。
今日に至るまでにお会いした講師の皆様の信念に通じるところを感じ、人を大切にされるから、愛葉代表の元には人やご縁を大切する仲間が集まるのだと納得しました。
Miss SAKEの審査基準が他のミスコンとは違い、単なる「外見主義」ではないところも、人を排出したい、その人と末長いご縁を築きたいという愛葉代表の想いにつながるのだと思います。
愛葉代表はMiss SAKEの事業以外にも僧侶をされており、宗派は違えど、仏に仕えるといったところで、私もご縁を感じました。
今後MissSAKEの活動を通し、どんな「ご縁」でどんな素敵な「人」と出会えるのか。
今からとても楽しみです。
サブカルとクラシック音楽
午後は、合同会社 セレンディピティ代表 黒田正雄さまによるサブカルとクラシック音楽と題した講義からスタートです。
黒田さんは元々オペラで歌われてらっしゃった方で、低く響くバリトンのお声がとても心地いい1.5時間でした。
「今日はどんな講義だったの?」と聞かれ、「サブカルとクラシックだよ」と答えると、その意外すぎる組み合わせに、大抵の人は「なんで?!」と驚いた表情を浮かべます。
一見すると全く繋がりのない二つですが、黒田さまの魔法の様な掛け算で大成功をおさめます。
黒田さまは、日本初のサブカル専門プロ合唱団Barzzを結成。誰しもが知るゲームのバックコーラスなど、多くの名シーンを手がけたのです。
その映像も拝見させていただき、サブカル好きの私としては大興奮!
日頃何気なく使っている「サブカル」という言葉ですが、
改めてその定義や歴史を知ることができ、これまで見えていなかった新たな価値も見出せました。
何よりも面白かったのが、黒田さまの「まずは混ぜる」のマインドです。
トライアンドエラーで、意外なものでも掛け合わせてみると、まさかの化学反応がおきる・・
私も黒田さまのように、常識にとらわれず掛け合わせに挑戦してまいりたいと感じました。
いけばな〜2021年 それ以降に向けて〜
この日の最終講義は未生流 笹岡家元 笹岡隆甫さまによる生け花の授業です。
笹岡さまが入ってこられた途端、無機質な会議室が急に色付いたような、不思議な感覚を味わいました。
笹岡さまの持つ圧倒的な華、そして纏っていらっしゃる雅な空気感からでしょうか。
生け花のお話はもちろんのこと、笹岡さまが発する言葉、使う言葉の選び方。
全てに感銘を受けました。
(完全に余談ですが。特に先生の使う「確からしさ」という表現が大好きでした。これは確率を表す数学用語です。生け花は数学との繋がりがある、と語る先生のバックグラウンドを感じられるワードチョイスだなと。)
そもそも私は、生け花はアートだと勘違いしておりました。
笹岡さまのお話を伺い、生け花とは単なるアートではなく、命そのもの・・いや、それ以上のもので、そこにある命に耳を傾け、よりきらめかせ、生ける人の心を落とし込む・・ものすごく尊い行事であると感じました。
生け花の成り立ちや、日本ならではのくずしの美について。本当の意味の”型破り”とは、色には位があること・・など(書ききれませんが)
美を多角的にとらえたお話の数々。
どのお話も目から鱗で
日本人として、今日まで生け花文化に触れてこなかったこと、自分の無知を心から恥じました。
我々日本人が、古来から何に美を感じてきたのか伺う中で、最も印象に残ったことが、「時のうつろいを愛でる」ことでした。
近年の日本の価値観では、多くの場面で老いることは醜いことと捉えられます。
歳をとることを恐れ、悲しむ若者がお大勢います。
老いに抗い、今あるものに加工を施し、すこしでも若く見せる。
これが今の日本の”美の普通”とされています。
今日の講義を聞き「それって、自分の人生を否定してることと一緒じゃん」と、ハッとさせられました。
年月を重ね、出てくるシワやシミには、その人の人生が刻まれるものです。
自然のままの姿、それにこそ本当の美が現れています。
生け花は、時の移ろいを愛でると伺いました。
蕾から朽ちるまで、その花を大切に扱う。
命を最後まで見届ける中で 時を経ること 歳を重ねるのは素敵なことと感じる、うつろいに美を感じる和の心を大切に、自らのうつろいも愛でていきたいです。
講義の最後に語られた「笹岡さまにとっての美」、”衣食住に準じるもの”とお答えになられました。
生きて行く上で本質的に必要となる、辛い時ほど必要な”心の支え”の様なものであると語ってらっしゃいました。
心を大切にされる笹岡さまだからこそ紡げる言葉です。
講義を受け、生け花を知ることは、日本そのものを知ることであると気づきました。
また多くの場面で仏教に通じるところも感じ、改めて、斉藤家の家業でもある仏教に関しても、もっと理解を深めたくなりました。
自分の美の価値観を見直すことができ「日本人の心」により目を向けるきっかけになった本日の講義は、一生忘れない尊い時間です。
改めて、貴重なお話を語ってくださった、合同会社セレンディピティ 代表 黒田正雄様、未生流 笹岡家元 笹岡隆甫様、そしてこのような学びの機会をくださった一般社団法人ミス日本酒 愛葉代表に心から感謝を申し上げます。
ありがとうございました。