【プログラム概要】
- 講師:
- 株式会社かまわぬ専務取締役 高橋基朗様
- 2016 Miss SAKE 田中沙百合様
- 名古屋大学 客員教授 佐藤宣之様
【活動内容】
この日の午前中は、日本の伝統的手法でてぬぐい作りを続けられている株式会社かまわぬより、専務取締役でいらっしゃる高橋基朗様が「てぬぐい講座」としてご講義くださいました。
午後には、2016 Miss SAKEグランプリを受賞された田中沙百合様から「「道」について」のご講義を、そして最後には、名古屋大学客員教授でいらっしゃる佐藤宣之様より「コロナ禍で会食が許されない今、日本酒を考える」というテーマでご講義を賜りました。
【学んだこと】
①【高橋基朗様 てぬぐい講座】日本の生活に根付いた工芸品「てぬぐい」の魅力
私がてぬぐいと聞いてまず思い浮かべるのは、銭湯で体を洗うおばあちゃんの後ろ姿です。
その次に、地元京都の駅でよく見る茶摘みをしている女性のポスター、最後に「祭」と書いたてぬぐいを地元のこども祭りで頭に巻いた記憶が蘇ります。
普段、てぬぐいを使ったり買ったりすることがなかった私ですが、思い返すと日常の様々なシーンで使われていたことに気づきました。
本日は、東京を中心にてぬぐいブランド「かまわぬ」の直営店を構えていらっしゃる「株式会社かまわぬ」の専務取締役 高橋基朗様より「てぬぐい講座」についてご講義を賜りました。
★日本の生活に根付いた小さな工芸品
お話を聞いて一番印象的だったのは、てぬぐいの使用シーンの幅広さ。
私が想像した銭湯・茶摘み・お祭り以外にも、手や顔をぬぐう・ものを包む・そうじに使うなど、布を使ったおおよそ全ての日常生活のシーンに登場しうるアイテムだという点が、新しい発見でした。
特に「乾きやすくて清潔」という特長が、温暖湿潤気候の日本だからこそ生まれた生活アイテムだということを物語っています。普段、お風呂の中でもお風呂上がりも、汗をかいた時もタオルを使うのが当たり前だった私ですが、速乾性が高く清潔に使え、長く使うほどに手触りが柔らかく肌に馴染んでいくと聞いて、早速タオルの使用シーンを徐々にてぬぐいに代えていくことにしました。
▲ご講義でいただいた「かまわぬ」のてぬぐいを、お洗濯後に干してみたところ。この速乾性はすばらしいです!お天気の良い4月下旬とはいえ、朝7時に干したてぬぐいは8時過ぎにはカラカラに乾いておりました。
青空と風の音がよく似合う、白地に濃淡の異なる藍がよく映える「冨嶽三十六景」がモチーフとなった絵柄です。
この乾きやすさなら、梅雨時期の毎日のお洗濯でも安心!てぬぐいは、日本の風土をよく考えて作られた、日本ならではの生活アイテムであることがわかりました。
そして、忘れてはならないのが、かまわぬ様のてぬぐいはただの生活アイテムではなく、職人さんの手でひとつひとつ丁寧に作られた「工芸品」であるということ!
「かまわぬ」でこだわられている染色の技術をご紹介します。
かまわぬ様では、明治時代に確立した日本独自の染色技術「注染(ちゅうせん)」を用いて、職人さんがひとつひとつ丁寧にてぬぐいの手染めをされています。
注染は、糸の中にまで染料を通して染める手法なので、布が硬くならずに吸水性がよくて乾きやすい仕上がりになるのが特長です。また、柄に裏表が出ないためリバーシブルで使えるという点で、てぬぐいには最適な染め方なのだとか。
職人さんが2工程に分かれて手仕事で染めていくので、すべてが一点モノという点にもそそられます。
しかも、天気や湿度でも染まり方が違うそうで、気温・天候によって染料を調整されると聞いて、まさに長年の経験がなせる職人技だということがわかります。
★お酒をてぬぐいで包んで粋なお持たせに!
高橋様は、てぬぐいを使ったティッシュ箱と4合瓶の包み方をレクチャーしてくださいました。
ティッシュ箱については、ティッシュケースとして使える形と、立方体を梱包する包み方の2通りを教わりました。
4合瓶については、包んで捻りあげるスッキリとした包み方と、持ち手ができるタイプの包み方の2通りを教わりました。
日本酒を買うと、不織布や和紙でこのように包まれていることがありますね!
お呼ばれの時にこうやって包んでお持ちすれば、お菓子やお酒が粋な手土産になってくれそうですね。
これから日本酒をお土産にするときには、こんな風にして持ち運んで一緒にてぬぐいもプレゼントしてみたいです。
高橋様、貴重なご講義をありがとうございました!
②【田中沙百合様 「道」について】「輝くスター」には、自分自身でなる!
2016 Miss SAKE Japanでいらっしゃる田中沙百合様から、「「道」について」というテーマでご講義を賜りました。
田中様は、一目見て一声聞いた瞬間から「明るいオーラ」を感じる素敵な女性で、内から発せられている前向きな姿勢がもっとも印象的でした。
★「輝くスター」には、自分自身でなる!
「とにかくモチベーションを下げない」「夢に見るまでイメトレをする」「自分自身にポジティブな言葉を投げかけ続ける」
田中様から発せられる言葉はすべてポジティブでした。それも、おそらく意識されてのこと。スーパーな熱量を感じる言葉たちばかりが、次から次へと出てくるのです!
そして、Miss SAKE Japanになってからの1年間、田中様は「スーパーマリオのスターのBGMがずっと流れていた」とおっしゃいます。輝かしい現場や世界を舞台にしたお仕事を、年間400件もこなされていたというのです。
一連のお話を聞いて、私が思ったことは「スターは降りかかってくるものではなく、自分で取りに行くものだ」ということです。
田中様は、ファイナリストになって以降、歴代のMiss SAKE Japanの先輩方を自身のライバルに見据えて行動し、必ず選ばれる!という気持ちで最終選考会の日を明確にイメトレして、どんな質問がきても応えられるように準備を欠かさなかったといいます。
私がクラシックバレエを続けていた時、何と言っても忘れられない最高の瞬間といえば、舞台の幕が開き眩しい照明に照らされて「よっしゃ、行くで!」と最初の一歩目を踏み出す瞬間です。今まで訓練してきた集大成を、観客の皆様に見ていただける瞬間です。
この瞬間を最高のものにするためには、当日どんなコンディションでどんなに舞台の床材が硬くて照明が眩しくても最高のパフォーマンスができるよう、半年かけて毎日が本番と思って稽古に励むのです。
逆に言うと、少しでも準備不足で舞台に挑もうものなら・・・。
「舞台の神様は見ているよ」と、バレエの先生によく言われました。自分の頑張りが甘いと潜在的に自覚しているときは、舞台上でいきなりパ(バレエのひとつひとつの動きのこと)が抜けて立ち尽くしてしまう夢や、音に遅れて周りに迷惑をかける夢にうなされて目を覚ますことがしょっちゅうありました。
舞台で輝くスターになるためには、自分自身ができる精一杯の準備をする以外の近道はありません。そんなメッセージを田中様から受け取りました。
田中様、貴重なお話をありがとうございました!
心が強く美しい女性で憧れの存在です。
③【佐藤宣之様 コロナ禍で会食が許されない今、日本酒を考える】日本酒をとりまく不都合な真実から目を背けない
名古屋大学の客員教授でいらっしゃる佐藤宣之様から、「コロナ禍で会食が許されない今、日本酒を考える」というテーマでご講義を賜りました。
佐藤様は、過去累計10年間・4度の海外勤務を経て、日本酒にまつわる活動を開始するようになられたといいます。
最近では、コロナ渦において飲食店の経営が危ぶまれており、そうなると日本酒が提供される機会が少なくなり、酒蔵にも影響が及びます。しかし一方、世界のデータを調べてみると、ワインのマーケットは逆に盛り上がりを見せているのだとか。
これには、日本酒が飲食店などのビジネス向け販売に傾倒しているという、業界的な理由があるそうです。
佐藤様はご講義の中で、何度も「日本酒はもっと飲む人に目を向けた活動をすべきだ」ということをおっしゃっていました。
★規制の多いアルコール飲料として日本酒を捉えたとき、私たちに何ができるのか
佐藤様のご講義を受けて、私は日本酒について深く考えさせられるきっかけをいただきました。
それは、日本酒を含むアルコール飲料に対する社会からのネガティブな捉え方についてです。
世界における健康意識の高まりを受け、WHOをはじめとする各機関から、飲酒や喫煙に対する規制を呼びかける声が高まりを見せています。
記憶に新しい2020年、日本では健康増進法の改定を受けて煙草の増税による価格改定、そして吸う場所に対する規制が強化されましたね。このとき、私は一人の愛飲家として「飲酒に対する規制も近い将来強化されるのでは」という危機感を覚えたことを明確に覚えています。
酒・煙草の販売は免許制であることを言及なさった佐藤様に、私の危機感を以下のような質問で投げかけてみました。
Q
日本酒をはじめとする酒類は、煙草と同じく販売が免許制だったり、販促活動に対する規制も、食品や消費財と比較して厳しいものと思われます。健増法の改定で喫煙に対する規制が厳しくなっていく現状を見ていると、酒類の販売にも同様の動きが見られるのではないかと危惧しております。税法面も踏まえて、佐藤様は日本における酒類の成長をどうお考えですか?
A
佐藤様は、「WHOでは10年前から、アルコール飲料に対しても煙草と同様に規制すべきで、年間の削減目標を作るべきだとする議論がなされている。世界的に見て、酒類をとりまく環境は厳しい。」と教えてくださいました。
そんな状況だからこそ、佐藤様は「大切なことは、今こそファンに目を向けてファンを大事にすることだ」とおっしゃいます。その中でも、特に、影響力がある立場の人にお酒を、それも日本酒を飲んでもらうことが大切だというのです。
例えば、外交において乾杯のお酒を日本酒にするなどといった取り組みが頭に浮かびました。確かに、国と国との関係性を友好に保つための場で美味しい日本酒がふるまわれ、適度に心地よく飲みながら話ができる場があれば、日本酒は外交をすらサポートする手段となりえます。
佐藤様のご講義では、すべての人や立場の人にとって飲酒がポジティブな文脈で語られるわけではない、お酒をPRする立場にあるからこそ不都合な真実にも目を向けるべきだという難しい課題を投げかけられたように思います。
ネガティブな側面から目を背けずに、それでもポジティブな面をニュートラルな目線で訴求していく、そんな社会に対する働きかけ方が今の時代には求められているのではないでしょうか?
佐藤様、貴重な学びのきっかけをいただきありがとうございました!