〜言葉の持つエネルギー〜
言葉は、呪いだ。
小学生の頃、クラスのいじめっ子にいわれた「ブス」の一言。
あの頃の記憶なんてほとんどないのに、誰かに言われた強い言葉ばっかりが、壁に貼ったシールのように私の脳にひっついて、剥がれない。
この呪縛は逆もまた然りで、
10年前に好きな人に言われた「その色似合うね!」のマジックから抜け出せず、ついついその色ばかり買ってしまう・・・。
そんな経験、ありませんか?
植物は褒めるとよく育つ、と言うのは、本当かどうかはわかりませんが有名な話。
また最近の教育論では、子どもに注意する時に名前を呼んでしまうと、その子には「自分はダメなんだ」と刷り込まれてしまうので、否定的な言葉と子どもの名前を並べてはならない、なんて主張もあるそうです。
言葉は、呪いの様に何年経っても人を縛り、がんじがらめにしてしまう。
それだけの強い力がある。と私は思います。
その反面、マラソン大会での沿道の応援で、練習では出せない記録をだしたりとポジティブな言葉には、眠っているエネルギーを引き出す鍵の様な役割もありますよね。
2016にMiss SAKE JAPANに輝いた田中沙百合さんは、「言葉の力」を重んじ、自分を大切にされている、エネルギーの塊の様な方でした。
沙百合さんが発する言葉は、すべてポジティブ!
自分にも他人にも肯定的な言葉を投げかけていらっしゃる姿がとても印象的でした。
自分を認め、大切にし、健全な自己肯定感を育む。
思ったことをきちんと言葉にし、自分で自分を納得させる。
これこそ、私が目指している理想像。そんなお方でした。
さて、2016 Miss SAKE JAPAN 田中沙百合さんによるこの講義は「道」についてと題されています。
剣道、柔道、茶道、華道・・など、日本古来の文化には、「道」の文字が入っていますよね。
講義では沙百合さんの思う「道」の説明がありましたが、改めて、その定義を調べてみました。
「道」という漢字は、「首」と「しんにょう」で出来ています。
「首」は人間、そして「しんにょう」は往来を表すのだそうです。
人が行き交う場所、から発展して「人が行きつ戻りつを繰り返しながら得た最高至善のもの」を「道(どう)」というのだとか。
単に技術を磨くだけでなく、人としての成長をめざす、それが「道」ということ。だそうです。
まさに沙百合さんの姿と重なります。
この講座は、3歳より剣道の道を歩み、そしてその経験を通して得た「Miss SAKE JAPANに至るまでの道」講座でした。
- グランプリになった後に訪れる、環境の変化。
- 目指す上で田中さんが実践したマインドコントロール。
- 時には人に頼ることの大切さ。
ご自身の経験した全てを私たちに伝えようと全身全霊で挑んで下さった沙百合さん。
その中で,自身の”グランプリ”への認識の甘さを痛感しました。
私の予測に過ぎませんが、沙百合さんも、その「甘さ」に気づいていたんだと思います。
「みんな、Miss SAKE JAPANになりたいと思ってる?!そのイメージができてる?!」
講義の最中にそう問われ、ハッとしました。
もちろん、考えていました。いや・・・正しくは、考えていた「つもり」だったのかもしれません。
最終選考会当日の舞台上での動き。グランプリになり、サッシュをもらう瞬間・・その時に観客席から見える親友の表情・・・
まるで事実であるかのごとく、丁寧に、詳細に思い描く。
そうして初めて「考える」と言うことになるのだと、沙百合さんのお話を聴いて感じました。
「つもり」じゃ、到底グランプリにはなれません。
この中で何人のファイナリストが、そこまで描けていたでしょうか。
勿論、わたしにはみんなの心の中は読めません。
ですが、沙百合さんに伝わるほどの情熱が、我々からは出ていなかった。
既に2016 Miss SAKE JAPANになられている沙百合さんの思いが、これから最終選考会を迎える、一番強くなくてはならない我々よりも強かったんです。
それゆえに沙百合さんは、繰り返し我々に「グランプリになって!」「なれるから!」と伝えたのではないでしょうか。
一人一人にしっかりと目を合わせながら語ってくださる沙百合さんのお話を伺う中で、「あ、今、みんなの意識が変わったな」と肌で感じる瞬間が、確かにありました。
沙百合さんのの言葉に心が動き、皆一様に「Miss SAKE JAPAN」の方を向いたのです。
自分の「道」を追求し、極めた人は、他人の「道」も導いてくれる。
そんな強さがありました。
言葉は、呪いでも、鍵でもあります。それをどう使うかは、自分次第。
発するなら、自分を認めてあげる前向きな言葉を。
そして夢を持ったら、思うだけじゃなく、声に出して、自分自身に伝えよう。
きっとそれが自分の可能性の扉をひらきますから。
コロナ禍で会食が許されない今、日本酒を考える
後半は、名古屋大学 客員教授 佐藤宣之さまによる「コロナ禍で会食が許されない今、日本酒を考える」と題する講義でした。
インターネット社会となり、気軽に情報を取得できる時代となりました。私たちは常に、膨大な量の情報にさらされています。
中には悪意のあるフェイクニュースや真偽不明な情報も・・・。
となると、我々に必要になってくるのは「価値ある情報の取捨選択」です。
「新型コロナウイルスの影響で、日本酒の売り上げは低下してしまっている」
ただでさえ右肩下がりだったものが、より打撃を受けている・・といったニュースやコラム。
よく聞こえてくる話です。
私たちはそれを読んで、「世界的に不景気だし、飲食店も閉まってるし、そりゃあお酒は売れないよね」と納得することでしょう。
でもそれって、「正しい情報」なのでしょうか。
その真偽を確かめるには、別の角度から情報を精査しなければなりません。
ワインの例を見てみましょう。
コロナ禍で、ワインの売り上げはどうなっていると思いますか?
・・・実は、下がるどころか、ものすごく売れているんだそうです。
ロックダウンされお店が閉まっているので「じゃあ家で飲もう!」と言うことで、ワインの需要はむしろ増えているとのこと。
日本酒の売り上げは振るわないのに、ワインは好調。
その違いの秘密は、ワインとの売り方の違いにあります。
ワインは顧客に売っているのに対し、日本酒は個人向けではなく、流通者(売る人)に向けて売っていたそうです。
日本酒は高級品であり、本来家で飲むものではなく接待贈答品の世界、または飲食店の世界で売れていたもの。
個人をみていなかった結果が、今につながっているんだそうです。
こういった内容を含め、世界において日本酒の置かれている現状をメディアによってコントロールされている姿ではなく、海外経験豊富な佐藤様の視点から読み解いていった1.5時間でした。
「不都合な真実に耳目を向けない人が多いんですよね」
と柔和な笑顔で語る、佐藤様。
情報の裏側に目を向け、正しく物事を判断できる様になると今度は対策も容易になっていきます。
佐藤様が考える、日本酒が世界で生き残るためにとるべき道として、
- グローバルブランドとしてパリで発信されること
- 然るべきルートに乗るようなプロモーション
- お酒を飲む社会のリーダーに日本酒の良さをわかってもらう必要性
- 海外での品質保持の必要性
など、様々なご意見を伺いました。
佐藤様は常に中立に、俯瞰的に、そして当然のことながら、私とは全く違う角度から物事をみていらっしゃいます。
人は、毎日触れるもので視座を養います。365日の積み重ねが、差を作るのです。
Miss SAKEという”物事を伝える立場”として、正しく情報を読み解き、様々なアプローチで発信してゆくために、日々少しずつ知識や経験を積み重ね、自らの視座を養うことの大切さを痛感しました。
改めて、2016 Miss SAKE JAPAN 田中沙百合さん、名古屋大学 客員教授 佐藤宣之さま
新たな気付きと学びを有難うございました。