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文化を背景にした「愛感謝仕込み」とは?〜長野県大信州酒造様の酒蔵見学を通じて〜 / 2022 Miss SAKE 神奈川 横田早紀

皆様こんにちは。
2022 Miss SAKE 神奈川 横田早紀です。

日本一文化を語れる蔵を目指し、世界一への矜持を持った酒蔵、大信州酒造様にて、酒蔵見学をさせていただきました。

全商品に、鑑評会出品酒と同じこだわりを持って、文化の溶け込んだお酒を造りたい!

そんな「文化を背景にした吟醸蔵」では、どのような日本酒造りが行われているのか、ご紹介させていただきたく思います。

愛感謝仕込み ~大杜氏から継承する思い~

今回の訪問では、特別に一般公開されていない酒蔵の中まで見学させていただきました。

広々として明るく綺麗な蔵の中。

毎日掃除を徹底してらっしゃると伺っていたのですが、本当に壁から床まで全てが磨き上げられていました。

ふと気付くのが、壁や機械にお札のように貼られた「愛感謝」の文字。

これは、大信州の大杜氏であられた下原多津栄杜氏が祈りを込めた言葉だそうです。

信心深かった大杜氏は、人に限らず道具や米や水、信州の風土、見えないものにも愛情や感謝の気持ちを持って酒造りに臨まれたそう。

その思いを継承し、現在でも社員様で短冊に「愛感謝」の文字を書き、忘れぬよう蔵のあらゆる所に貼っていらっしゃいます。

唯一残っている大杜氏の書かれた「愛感謝」の現物を拝見したのですが、そこには「麹」の文字の下に鉛筆書きで「さん」と書かれており、そこに込められた敬意と愛情を感じさせられました。

塵を積み上げて山にする ~細部までのこだわり~

そんな愛感謝仕込みは、どう体現されているのでしょうか?

日本酒造りの各ステップで、繊細なこだわりの積み重ねを感じました。

1.精米

自社の精米機をお持ちの大信州様。

契約農家様別の精米を行うことで、同じ造り方をした日本酒でも、お米の味の違いを感じられるお酒造りを行われています。

様々な農家様で作られたお米が混じり合う事なく日本酒になるという小さなこだわりが、愛感謝仕込みの1ステップです。

2.洗米

精米後の洗米のステップでも、こだわりが。

お米が水を急激に吸って割れてしまわないよう、低温の水を使います。

使うのは水道水ではなく、仕込みにも使う長野県松本の井戸水

一度に大量のお米を洗うと水温が変わってしまうので、10kgごとに分けて、丁寧に洗うそうです。

3.自然放冷

お米を蒸した後は、機械ではなく人の手での自然放冷を行なっています。

そしてエアシューターを使わずに、米を手で触りながら移動させることでまた、愛感謝仕込みは積み上げらます。

4.麹室

木で作られた麹室でも、機械での温度管理に頼りきらず、人の手で触れながら麹を見守ります。

杜氏の森本様は、かつての停電を振り返り「その感覚を蔵人が知らなかったら、その場にあった麹が全て使えなくなってしまっていただろう」とおっしゃいます。

人の手で感覚を培っていたからこそ当時の状況下で、麹の温度を守り抜けたそうです。

5.開放発酵

発酵にも、自然と寄り添う大信州様の理念が体現されています。

もろみの顔が直接見える高さにもろみのタンクを起き、開放発酵を行うことであえて自然の影響を受けるようにしています

機械上では室温が同じなのに、外気温でもろみの温度が変わったり、理屈ではない生き物の変化を感じる機会が多々あるそうです。

気温や天候に合わせて、お酒が味わいを変えていく。

その個性を自然との寄り添いの結果として愛おしく思えるお酒造りがここにはあると感じました。

米作りから瓶詰めまで一気通貫した愛感謝仕込み。

この小さな積み重ねがどこまで味に反映されるかは分からないけど、「塵を積もらせて山にする」と思っているから。

そんな田中様のお言葉が、心に刺さりました。

塵を積もらせて作った山はすぐに吹き飛んでしまうものだからこそ、小さなことでも乱暴にしない。

口では言えても、やはり機械を使って、時間短縮をしてしまいたくなるだろうと思います。

愛感謝を丁寧に体現する一貫した理念が、この大信州様の味を作り出しているのだと感じました。

ペアリング

酒蔵見学をさせていただいた後は、お昼ご飯のお弁当と大信州様の日本酒のペアリングを体験させていただきました。

(写真左より)
1、GI長野 ひとごこち やまだふぁーむ 2021
2、GI長野 金門錦 2021

最高の食中酒を目指した2本。きめ細やかな口当たりと芳醇で辛口な複雑な酸味。長野県産のお米を契約農家様別で日本酒にした商品。

3、掟破り 純米大吟醸生詰め

原則タンクごとに日本酒をブレンドしない大信州様が、掟破りをしてブレンドを行ない、良いとこ取りをした1本。

4、手いっぱい 純米大吟醸

洗練・軽快・デリシャスリンゴの香味と調和を体現する、大信州様の基準となる、代表銘柄。

5、香月 神寿

鑑評会出品酒の中取り部分だけを瓶詰めした、吟醸造りの最高峰、日本酒の価値創造を担うこだわりの1本。

6、みぞれりんごの梅酒 信州花宙

日本酒仕込みの梅酒と、長野県名産の果肉入りすりおろしりんご果汁を合わせたお酒。

【大信州酒造様 日本酒一覧】

http://www.daishinsyu.com/products

ありがたく贅沢なことに、6種類ものお酒を頂戴いたしました。

どれを飲んでも全て美味しく、調和の取れた複雑な味わいと、果実味を感じる香味を感じます。

「これが大信州様の味」というのが分かったような気がしましたし、「手いっぱいの会」と呼ばれる集いが出来たのにも納得でした。

今回の酒蔵見学を通じて、大信州様の一貫した理念と、文化に根ざした酒造りへのこだわりに感銘を受けました。

「昔に戻った古いやり方」というわけではなく、「自然と寄り添い、信州の風土と文化に根ざした丁寧な酒造り」を実施する大信州様。

日本酒造りの裏側にあるストーリーを知った事で、改めて日本酒の価値を感じさせられました。

1本100万円するワインはあっても、日本酒にはまだその世界線は無いです

これだけの文化と思いを多くの人に知ってもらった先には、まだ見ぬ日本酒の世界が広がっているのだろうと希望を感じました。

(大信州酒造株式会社 田中隆一社長とともに)

またひとつ、日本酒への思いが積み重なった1日でした。

今の私がいられる全ての環境に愛、感謝

2022 Miss SAKE 神奈川 横田早紀

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